研究課題
挑戦的研究(萌芽)
脳の感受性期にある子どもへのネグレクト養育は、心と脳に生涯消えない傷跡を刻み、成人後も多数の精神疾患やパーソナリティ障害の罹患率増・重篤化、自殺率増による苦痛を与えることから、被ネグレクト児への早期介入・治療が強く望まれている。しかし、介入を決定付ける客観的バイオマーカーはなく、ネグレクト死を見過ごすケースが少なくない。申請者らは、被ネグレクト児の介入・支援の標的になる可能性を仮説し、小児期の被験者を対象に、この仮説に基づくエピゲノムマーカーの開発を、その神経機序・感受性期解明と同時に進める。
極めて劣悪なネグレクト養育(マルトリートメント)環境で育った児は、脳に生涯消えない脆弱性が刻まれ、多数の精神疾患罹患リスク増・重篤化、これに伴う自殺率増が懸念され、一刻も早い介入や治療が必要である。しかし、介入開始を決定付ける為の客観的バイオマーカーもなく、現状は状況からの判断となり、虐待の死因で最も多いネグレクト死を見過ごしてしまうケースも少なくない。本研究では、主に、他のタイプのマルトリートメントを経験していないネグレクト児(Neglect群、n=23)と定型発達児(TD群、n=140)の脳の構造的および機能的な違いが、ネグレクト児に認められる特定の心理社会的表現型とどのように関連しているのかを検討した。その結果、ネグレクト群では、前帯状皮質(ACC)が大きく、左角回(L.AG)の灰白質体積(GMV)が小さいことが判明した。ACCが大きいことは、多動や不注意と関連していた。安静時fMRI解析では、顕著性ネットワークの上側頭回とACCの間の機能的結合(FC)が減少していた。また、右中前頭回とのFCの増加も観察され、友人関係の問題や抑うつ症状における全般的な心理社会的行動の困難と関連していた。さらに、ネグレクト群では、L.AGと左小脳間のFCの増加が認められ、友人関係のトラブルと関連していた。幼少期のネグレクト曝露は、典型的な脳発達の不適応を引き起こし、特に感情調節と社会的相互作用を担うネットワークに影響を与えたと考えられる。
3: やや遅れている
COVID-19の影響もあり、MRI被験者のリクルート実施が当初の計画より遅くなったため
引き続き今年度も、被験者リクルートおよび脳MR画像解析を推進する。また、それらの最終結果について論文投稿を目指す。
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すべて 雑誌論文 (40件) (うち国際共著 10件、 査読あり 21件、 オープンアクセス 40件) 図書 (6件)
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