研究課題/領域番号 |
21K18505
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東田 学 大阪大学, サイバーメディアセンター, 講師 (40263339)
|
研究分担者 |
白井 詩沙香 大阪大学, サイバーメディアセンター, 講師 (30757430)
上田 真由美 流通科学大学, 経済学部, 教授 (30402407)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
|
キーワード | プログラミング教育 / STEM教育 / リメディアル教育 / 高大接続 / ユーザ体験 |
研究開始時の研究の概要 |
理系・文系分野を問わず、数理科学を情報学と融合したデータ・サイエンス教育の強化が求められている。一方で、コロナ禍を通して、授業形態のあり方が改めて問われている。本研究は、プログラミング授業の開発と並行してSNSを模した分散型ノートブック・インターフェイスによる学習支援環境の構築に挑戦する。それに際して、受講者が高大接続において、初等・中等教育における学習内容をプログラミング学習を通じてリメディアル教育として再獲得するとすると同時に、リベラル・アーツ教育として体系化することを目指す。さらに受講者がプログラミング技能を高等教育や就業時に求められるアカデミック・スキルとして獲得することを目指す。
|
研究実績の概要 |
理系・文系分野を問わず、数理科学を情報学と融合したデータ・サイエンス教育の強化が求められている。同時に、コロナ禍を通して、授業形態のあり方が改めて問われていたが、コロナ禍収束の目途があり、オンラインを想定して適用的進化した学習形態から、対面を前提とした学習形態への再適用が求められている。本研究は、高大接続に際して、初等・中等教育における学習内容をプログラミング学習を通じてリメディアル教育として再獲得すると同時に、リベラル・アーツ教育として体系化すること、さらに、プログラミング技能を高等教育や就業時に求められるアカデミック・スキルとして獲得することを目標としている。 【コロナ禍影響の調査】コロナ禍を通じて、オンライン資源を活用した学習形態への適用の動向を日本とドミニカ共和国の大学を対象に調査を行った。両国合わせて120余りの大学から回答を得て分析を進めている。 【学習コース開発】本年度から普及が始まった事前トレーニング済みトランスフォーマAIとの対話によるプログラミイング支援の導入を進めている。大学初年次であれば技術転換点にあると判断できる応答が確認されている。 【学習支援環境構築】本研究では、オンライン授業でのプログラミング支援ための対話を実現するため、Jupyterノートブック形式の対話環境にSNSを模したユーザ・インターフェイスを導入するための開発を行っている。本年度は、JupyterLabライブラリを活用し、統合型プログラミング環境であるVisual Studio Codeを対象とした拡張ライブラリに開発を転換し開発速度を上げている。並行して、前述したトランスフォーマーAIとの対話インターフェイスを導入した。 【学習アクティビティ分析】AIとの対話を含む受講生の応答を蓄積し、AIが回答するコードを受講生がどのように活用したか分析するための解析ライブラリの開発を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【学習支援環境構築】米国カリフォルニア大学バークレイ校におけるデータ・サイエンスの高等教育機関初年次教育に着目し、同校で開発されたJupyterHubやJupyter Bookによる対話的プログラミング環境を構築した。そこで得られた知見に基づいて、本年度の秋学期から大阪大学の情報教育システムにおいて試行的にJupyterHubサービスの提供を開始した。AXIES (大学ICT推進協議会) 2022年度年次大会の企画セッション「BYOD時代の情報教育環境を考える」にて東田が概要を紹介している。本システムは、構内設備を一切持たず、データセンターのクラウド型サービスを活用して構築しており、授業時間や受講生の構成に対応し柔軟に資源提供できる。GPU利用も可能であり授業から研究への活用も視野にいれている。 【学習コース開発】本研究に先立って、2020年度から大阪大学における初年次ゼミナール「学問への扉」において、「プログラミングで遡る科学史」を開講している。当初はMathematicaで教材を作成し、科学的知見の参照のためWolfram Alphaと呼ばれる知識ベースを活用していた。本年度から前述したJupyterHub上でのPythonを対象として教材の改版を行った。教材の配布はJupyter Book形式で行い、JupyterHubへの円滑な接続を提供している。知識ベースへの参照は、Webスクレイピングのような技巧に依存することとなった。 一方で、プログラミング支援に限定的に導入されてきたトランスフォーマAIが、本年度から自然言語による汎用的応答が可能なチャット型AIとして公開された。大学初年次の課題であればプログラムの仕様を適切に伝えることでプログラミングが可能になりつつある。知識ベースとしてのアクセス、さらにプログラミング支援のためのプロンプト導入による教材の改版を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
【学習支援環境構築】本研究で構築したJupyterHub環境は、次年度から大阪大学マスタープラン2027における加速事業の一つとして支援を受けることが決まり、"OUDX Analytics Service Platform" として改めてより広く試行サービスを提供をするための準備を進めている。授業時間や受講生の構成に対応し資源提供するための自律的資源拡張機構の導入を行う。これはGPU利用にも対応しており、高性能演算や機械学習を活用した授業から研究への活用も視野にいれることができる。 【学習アクティビティ分析】本研究が対象とする授業では、対話型プログラミング学習支援環境に、適宜的および事後的な学習解析が可能なデータ記録機構を導入している。これまでは、講師が配付資料で提供した模範コードを受講生がどのように実行したかを追跡してきたが、さらに、AIが回答するコードを受講生がどのように活用したかを追跡する。授業時間内、さらに自習時間を通じて受講生が適正なプロンプトを得るまでの試行の過程を分析する。特に、授業時間内の試行では、授業での集中度判定にも活用する。 これまでの授業では、限られた時間内でプログラムの正確性の検証や実行速度向上などの妥当性の評価までは言及し実践することが難しかった。これに対し、AIとの対話の文脈を深化させることを課題と課すことで、自習時間に効果的に学習を深化することができると考えられる。このような課外活動は、AIによる応答の妥当性の検証の訓練として最も適していると考えられる。 この考察に基づき、AIによる応答を含めて蓄積する時系列データと、そこに含まれるプログラム・コードの類似性に着目することで、受講生が、講師が提供する例題やAIからの回答をどのように改変したかを数値化し、その時系列変化によって受講生の試行錯誤の過程を定量評価し可視化する手法を研究する。
|