研究課題/領域番号 |
21K18596
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳澤 実穂 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50555802)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 神経 / 高分子液晶 / 偏光 / 配向 / 相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
意識の源である神経細胞の物理的解明は、生命科学から情報まで多大な波及効果を持つ。近年、神経細胞を高分子液晶と示唆する報告が相次いでいる。神経細胞の中央にあるニューロンフィラメントは配向した棒状高分子の束であり、それを覆う多層の脂質膜構造は強誘電性の高分子液晶と類似する。神経伝達する波を膜伝搬するソリトン波とするニューロン表面波仮説も、神経細胞全体が液晶であれば説明がつく。このような数多くの示唆に対し、神経細胞を高分子液晶と示す実証研究はない。そこで本研究では、神経細胞へ電場印可し、光学特性や電気特性の解析から高分子液晶であるかを問う。
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研究実績の概要 |
神経細胞内部には、ニューロンフィラメントと呼ばれる棒状の高分子の束が中央にあり、その周囲を多層の脂質膜構造が覆っています。この膜構造は、強誘電性の高分子液晶と似た性質を持っています。また、神経伝達の波を膜伝搬するソリトン波とするニューロン表面波仮説も、神経細胞全体が液晶であれば説明がつきます。こうした神経細胞と液晶を対応付ける報告が数多く存在する一方で、実証研究はほとんど行われていません。そのため、本研究では、神経細胞に電場を印可して、光学特性や電気特性の解析から、その神経細胞が高分子液晶であるかどうかを調べることを目的としています。 これまでに、ヤリイカやスルメイカを解剖して神経軸索を採取し、偏光顕微鏡下で観察することにより、神経軸索に沿った光学異方性を調べました。その結果、神経軸索の表面と中央には、光学特性の異なる少なくとも2つの層構造が存在することが分かりました。さらに、この光学特性を生み出す生体高分子を特定するため、マイクロキャピラリーを使用して分子を採取し、生化学的な解析を行いました。その結果、2つの層それぞれに局在する分子をほぼ特定することができました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、ヤリイカやスルメイカから採取した神経軸索に対して、偏光顕微鏡を用いた光学特性と、電気刺激を与えた際のその変化を解析しました。神経軸索に沿って大きく2つに分けられる層構造に対して、それぞれに局在する分子と光学特性の対応関係を概ね明らかにすることができました。また、電気刺激を与えると、神経細胞全体が収縮して変形すると共に、光学特性が変化する様子も観察されました。今後は、観察用チャンバーを改良することで、電気刺激に応じて神経細胞の光学特性が変化する様子を、より詳細に解析する予定です。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度から継続している内容に加え、神経細胞が受ける電気刺激によって生じる光学的特性の変化をより詳細に解析する予定です。この解析において問題となるのは、電気刺激によって神経細胞が大きく変形してしまい、顕微鏡の焦点面から外れてしまう点です。そこで2023年度では、神経細胞を細長いチャンバーに閉じ込めることで、この問題に対処することを計画しています。
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