研究課題/領域番号 |
21K18651
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
塩川 和夫 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (80226092)
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研究分担者 |
大山 伸一郎 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 講師 (20444424)
小川 泰信 国立極地研究所, 先端的レーダー研究推進センター, 教授 (00362210)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 大気流出 / 窒素分子イオン / オーロラ / ファブリ・ペロー干渉計 / 427.8nm / 超高層大気 / 電離圏 |
研究開始時の研究の概要 |
極域のオーロラでは、その上辺が青く光ることがある。この青いオーロラは、窒素分子イオンが高い高度まで上昇し、薄明の太陽光を共鳴散乱して光っていると考えられてきた。しかし質量の重い窒素分子イオンがなぜ高い高度に上昇するか、その機構はよくわかっていない。本研究では、高高度で発光する青いオーロラを、ファブリ・ペロー干渉計を用いて世界で初めて高分解能分光することにより、発光している窒素分子イオンの上昇速度を計測し、高高度の青いオーロラ発光の発生メカニズムを探る。さらに、青いオーロラ発光の分光計測というこれまで行われなかった新しい手法で、地球大気の宇宙空間への流出過程の解明にも貢献する。
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研究実績の概要 |
・令和4年度は、ノルウェー・トロムソ観測点を令和4年9月に研究協力者が訪問し、現地で運用しているファブリ・ペロー干渉計(FPI)に、前年度に購入した波長427.8nmの青いオーロラ発光を観測するためのバンドパスフィルターを設置した。これにより、この青いオーロラの分光観測を令和4年9月から令和5年3月まで実施することができた。 ・これらの観測で得られた波長427.8nmの干渉フリンジから、発光体であるN2+イオンの速度を求めるために解析を行った。干渉フリンジの強度が非常に弱く、強いオーロラが現れた令和4年12月や令和5年3月の磁気擾乱時のデータを中心に解析を行った。 ・特に2022年12月15, 16, 17, 19日は、EISCATレーダーとの同時観測実験を実施し、電波観測と光学観測の比較ができるデータを取得するようにした。しかしすべて曇ってしまったので、両者の同時データは得られなかった。 ・得られたイオン速度は、同じ時刻に得られた異なるフリンジ同士で大きく異なる値を示すことが多いため、何らかのノイズがフリンジに重なっていることが想定された。 ・これらの解析と並行して、N2+イオンのバンド発光輝線の波長・強度の理論データを文献等から探した。この結果、観測された干渉フリンジには複数のバンド発光輝線が含まれること、この発光輝線輝線同士の強度比は発光体であるN2+イオンの温度によって変化することが分かった。このイオン温度依存性を計算するプログラムを入手し、予測される干渉フリンジをモデル計算で再現した。その結果、観測された干渉フリンジは理論的に予測される干渉フリンジよりも構造が少なく、ピントのずれなど、何らかの原因で細かい構造がなまされていることが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に購入した427.8nmのバンドパスフィルターをノルウェーのFPIに装着して観測を開始し、2022年度冬季にわたって観測データを得ることができた。このデータの解析から、風速を求め、その中に含まれるノイズの原因の考察が開始されている。また、理論的に予測される干渉フリンジをモデル計算で再現することにも成功して、再現した理論フリンジを観測されたフリンジと比較することができている。今後、さらに解析や理論データと比較して、精度を上げていくことが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には、EISCATレーダーからEISCAT_3Dレーダーへの移行に伴って、ファブリ・ペロー干渉計を現在のトロムソ観測点から約20㎞離れた新しいSkibotn観測点に移設する。移設後、引き続き波長427.8nmの窒素分子イオン発光の観測を継続してより良いデータを取得する。 ・これらの観測データを解析し、得られる風速データに含まれる誤差について考察する。また、理論から予測される干渉フリンジに人工ノイズを乗せてイオンの速度計算を行うなどして、観測から得られる窒素分子イオン速度の精度を評価する。 ・得られた結果を国内外の学会や研究会などで発表していく。
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