研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究は,微小領域加工法である集束イオンビーム (FIB) を用いて作成した薄膜試料中において,微生物の存在,分類群,および周辺鉱物の関係をその場で評価する新手法の開発を目指す.そのために,微生物その場検出法(蛍光in situハイブリダイゼーション法)と,有機物・鉱物観察法(透過型走査X線顕微鏡および透過型電子顕微鏡)を組み合わせる.
昨年度までの検討において,集束イオンビーム加工がMn(IV)を還元する可能性が示されたが,走査型透過X線顕微鏡のX線による還元の可能性もあった.そこでδ-MnO2のみを炭素支持膜付き銅グリッドに圧着し,走査型透過X線顕微鏡によるダメージを評価した.4つのδ-MnO2粒子に対して15回の繰り返し測定を行ったところ,全ての粒子においてMn(II)に特徴的な約640.5 eVのピークが徐々に顕著になったが,それでもなお全体のスペクトルはMn(IV)に類似したままであった.このことから,X線もMn(IV)の還元に寄与するものの,集束イオンビーム加工による還元の方が影響としては大きいことが示された.今後はガリウムイオンビームの加速電圧を低くするなど,還元を低減するための工夫が必要であろう.また,新手法の潜在的適用対象である様々な炭酸塩試料についての検討も,昨年度に引き続いて実施した.特にガスハイドレートに伴って産出するマイクロドロマイトに関しては,デジタルマイクロスコープの観察から,少なくとも2つの異なるタイプが存在することが明らかになった(タイプAとタイプB).そこで,これら2つのタイプから集束イオンビーム加工薄膜を作成し,透過型電子顕微鏡および走査型透過X線顕微鏡を用いて観察したところ,タイプAの中心部に微生物の細胞外高分子と思われる構造が見られた.中心部に微生物の細胞が存在している可能性もあるが,それらはドロマイト結晶で包埋されており,そのままでは本研究の新手法を適用することが困難であった.今後はドロマイト粒子を事前に割るなど,工夫が必要であろう.
すべて 2024 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件)
Sedimentary Geology
巻: 456 ページ: 106514-106514
10.1016/j.sedgeo.2023.106514
Frontiers in Earth Science
巻: 10 ページ: 1-21
10.3389/feart.2023.1188142
Island Arc
巻: 31 号: 1 ページ: 1-9
10.1111/iar.12448