研究課題
挑戦的研究(萌芽)
次世代の高性能電子デバイスを実現するためには、半導体の表面構造を精密かつ自在に制御できる、微細加工法の高度化が不可欠である。微細加工は従来、気相中(ドライエッチング)、もしくは液相中(ウェットエッチング)により行われてきたが、十分でない。今世紀に入り、“金属アシストエッチング”と呼ばれる、触媒を用いた新たなウェット加工法が登場し、期待が高まっている。しかしこれまでは、触媒に金属を用いる必要があると考えられており、半導体プロセスとの整合性に問題があった。本課題では、主に炭素原子から成るナノカーボンが金属と似た触媒作用を持つことに着目し、これを積極的に活用した、新たな微細加工プロセスを開発する。
本研究の目的は、ナノカーボンが持つ触媒作用を利用して、次世代半導体表面に対する液相雰囲気下での新しいリソグラフィー法を打ち立てることである。本研究期間内に、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscopy)を用いて、ナノカーボンの電子状態を原子スケールで観測した。そして、2つの線状欠陥が近接することにより、特異な電子状態が生成するという独自の提案を行った。また、共同利用施設である東京大学物性研究所のスーパーコンピューターを用いた第一原理計算を行い、先述した提案の妥当性を検証した。その過程で、ナノカーボンのエッジ部だけに留まらず、グラフェンネットワーク内にシワ状構造が存在することにより、近傍の表面電子状態、とりわけ、高いエネルギーを持つ電子分布に大きな影響を与えることを明らかにした。また、単一のナノカーボン材料が発現する触媒的な作用を明らかにするため、半導体表面上にグラフェン系のナノカーボンシートを散布した試料を準備した。そして、複数のエッチング液に浸漬することで、そのエッチング特性を調査した。その結果、エッチング液の酸化力が強ければ、深いエッチング痕が形成される訳では無いという興味深い結果を得た。単一ナノカーボンによる半導体表面におけるエッチング痕のメカニズムについて、グラフェン表面で起こる酸化剤の還元反応と、引き続いて半導体側に注入されるホール(正孔)の挙動、及び、グラフェン堆積部以外の自然エッチングの観点から、考察を深めた。
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