研究課題/領域番号 |
21K18684
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分19:流体工学、熱工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白樫 了 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (80292754)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 生体系の水 / 分子回転緩和時間 / 分子動力学 / 誘電分光 / 生体保護物質 / 水和殻 / 保護物質水溶液 / 水分子ダイナミクス / タンパク質 / 糖類 / 回転緩和時間 / 水分子 / 保護物質 / 劣化速度 |
研究開始時の研究の概要 |
ワクチンやタンパク質薬剤の多くは,薬効のある分子が水溶液中に存在しており,劣化が進みやすいため,保護物質を添加して有効期間を延ばしている.しかし,保護物質の選択は経験的であり,その性質・構造から薬剤の劣化速度を予測し,スクリーニング・設計する指針がない.本研究では,劣化の鍵とみられる保護物質を含む水溶液中の水分子の回転緩和時間を誘電分光により測定し,タンパク質薬剤の失活速度を予測する手法を開発する.さらに,保護物質分子周囲の水分子の回転緩和時間の空間分布や保護物質分子の構造が反映される電場分布,総電荷量等を,分子動力学法により算出することで,保護物質の構造と水分子の回転緩和時間の相関を調べる.
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研究成果の概要 |
タンパク質や生体保護物質の溶媒である水は,タンパク質の保存・安定性を大きく左右し,タンパク質の劣化を支配することが知られている.本研究では,劣化反応の緩和時間と1対1の関係にある水分子の回転緩和時間を支配する現象を明らかにすることで,これを制御しうる保護物質の物性を調べることを目指した.リゾチームと複数の糖類の水溶液について,誘電分光や分子動力学計算より水分子の誘電緩和時間(回転緩和時間)を求め,水分子の回転緩和時間は,1)水和殻内の電場の回転緩和時間,2)一つの溶質分子の水和殻内にある水分子の平均的滞留時間,3)水和殻の体積分率の3点を,溶質濃度や溶質の特性で制御すればよいことがわかった.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
バイオ薬剤の多くは,薬効分子が水溶液中に存在している.液体中の薬剤は,劣化が進みやすいため,経験的に選択した保護物質を添加して有効期間を延ばしている.本研究の成果は,薬剤劣化の鍵となる溶媒である水分子の分子運動(回転緩和時間)を制御する指針を見出した点で保護物質の選択・設計に資する.また,含水材料のマクロ特性を左右する水分子の回転緩和時間に焦点を当て,分子計算と測定が一致することを示し,分子スケールの現象との関係を明らかにした.その成果は,保護物質分子に限らず,水の介在で特性が変化する材料の選択や評価を高い信頼性で可能にする点で学術的にも意義がある.
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