研究課題/領域番号 |
21K18843
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
稲澤 晋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30466776)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | Vapor-Liquid-Solid / コロイド結晶 / 水-油界面 / 物質移動 / 界面現象 / 流れ / コロイド粒子 / Vapor-Liquid-Solid成長 / 結晶化 / 液滴触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
Vapor-Liquid-Solid(VLS)成長では、蒸気(Vapor)で供給される半導体の原子が金属融液(Liquid)に溶け込み、過飽和状態を経て固体ワイヤー(Solid)が自発的に生成する。現在ではナノワイヤーやナノチューブなど細長いナノ材料の代表的な作製手段である。しかし、金属融液を用いるため耐高温の材料が対象の結晶成長法である。 本質的に必要な環境を常温で実現すれば、汎用溶媒でもVLS法と同様の結晶化を起こせるのではないか。液滴を介した細長いコロイド結晶の作製を通じて、非耐熱の材料も対象とした汎用性の高い結晶成長法として検討する。またVLS成長のメカニズムも検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、常温のコロイド分散液を用いてVaporーLiquidーSolid(VLS)機構が起こる可能性を検討している。VLS機構は、無機半導体材料で生じるウィスカー生成のメカニズムとして提唱され、ナノワイヤーなどの極細の一次元材料の生成手段として用いられている。原料原子の金属液体への自発的な溶け込みを利用しているが、原子とはスケールが大きく異なるコロイド粒子に適用できる可能性を検討している。1つの重要な点は、気液や液液の界面を介した物質移動がどのように起こるのか、という学術理解である。 2年目はこの点に力点を置き、水と油の界面で物質移動がどのように起こるのかを基礎的な系で検討した。具体的には、両親媒性の分子(界面活性剤)をモデルとして用い、水と油(不揮発)の両方に溶解させた。密度の関係で水の上に油が存在するlayer-by-layer構造である状態で、下層の水を蒸発させると、水中の活性剤濃度が上昇する。これに伴って、水中で過剰となった活性剤分子が油中に自発的に移動する。この移動速度と、活性剤の油相への移動に伴う水の蒸発速度の変化を測定した。その結果、活性剤が油中に移動するほど水の蒸発速度が下がること、蒸発で水の割合が大きく減ると、水と油の活性剤濃度が平衡組成からずれること、を明らかにした。特に平衡組成からのズレは、水の蒸発速度が極めて遅い条件でも確認された。平衡状態での溶解度は、速度過程での溶解濃度を考える上で参考程度にしかならないことを意味する。コロイド粒子の分散限界濃度についても同様のことが言えると推察される。界面が関わる複雑な現象の一端を明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
界面をまたいだ現象は基本的に観察が難しいが、2022年度の成果では液界面を介した物質移動現象を確認できた。コロイド粒子の移動に拡張するにはまだハードルが多いものの、順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
界面を介した物質移動に引き続き取り組む。界面に対して粒子の移動ベクトルが垂直ではない場合に起こる現象や、界面を介した熱の移動にも視野を広げ、界面が関与する物質や熱の移動現象の学理を明らかにする。これらの知見に基づいて、コロイド粒子VLSの可能性を検討する。
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