研究課題/領域番号 |
21K19069
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 稔 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80191617)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | シデロフォア / 生合成遺伝子 / 化学構造進化 |
研究開始時の研究の概要 |
微生物二次代謝物の生合成には多数の遺伝子が関わるにもかかわらず、途中段階では生物活性のないものがほとんどであり、進化の過程でそれぞれの遺伝子がどのように選択されたのかは謎である。シデロフォア型抗真菌化合物を産生する糸状菌のゲノムを解読したところ、抗菌性のないシデロフォアの生合成遺伝子をもう1つ見出した。本菌は2種のよく似たシデロフォア分子に、抗生物質としての機能に加えて鉄取り込みや貯蔵など、別々の機能を持たせている可能性がある。本研究ではこの仮説を検証し、その分子メカニズムを解明する。さらに鉄吸収、貯蔵、抗生、共生等多様な機能に関わるシデロフォアの化学構造多様性が生まれる駆動力を考察する。
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研究成果の概要 |
本研究は糸状菌Acremonium persicinumの生産する2つのシデロフォアの構造進化と生理的役割を解明し、「微生物二次代謝産物の化学構造進化の謎」に迫ることを目的とした。我々は本菌のゲノム中にASP2488053とフェリクローム様シデロフォアの生合成遺伝子を見出した。sid1とsid2と命名したこれらを破壊し、sid1はASP2499053、sid2はフェリクロシンの生合成遺伝子であること、ASP2488053は鉄飢餓条件下で細胞外に分泌され、抗生物質と同時に鉄取り込みに使われるが、フェリクロシンは鉄過剰条件下で細胞内に蓄積され、鉄の貯蔵とその毒性の回避に働くことを明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
生物の共通の問題の一つが、難溶性の鉄イオンをいかにして環境中から取り込み、利用するかである。ヒトも例外ではなく、血中鉄イオンを効率的に運搬するためにトランスフェリンを生産する。一方、多くの微生物や植物は鉄イオンを保持して細胞内に取り込むためにシデロフォアと呼ばれる低分子化合物を生産して環境中に分泌する。シデロフォア型抗真菌化合物ASP2488053は鉄に強くキレートし、シデロフォア輸送体を介して標的細胞に取り込まれて殺菌効果を発揮する。鉄取込みと競争相手を攻撃する抗生物質という異なる機能を同時に持たせた巧妙な進化の一端が明らかになった。今後、鉄イオンを介した感染治療等への発展が期待される。
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