研究課題/領域番号 |
21K19340
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
渡邊 博志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (70398220)
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研究分担者 |
丸山 徹 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (90423657)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | オロソムコイド / AGP / 糸球体バリア / orosomucoid / 腎病態 / 慢性腎臓病 / 蛋白尿 / 腎炎症 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、我々が独自に見出した急性相蛋白質オロソムコイド(AGP)による蛋白尿抑制作用の分子基盤を解明し、慢性腎臓病(CKD)治療へ応用することを到達目標とした。まず、最近確立したAGP KOマウスを用いて1.糸球体バリア機能と2.腎炎症に対する内因性AGPの寄与を確認するとともに、外因的AGP投与による蛋白尿抑制機序を明らかにする。次に、CKDマウスに対する1)外因的AGP投与や2)内因性AGP誘導薬投与並びに3)AGPで分化誘導したマクロファージによる細胞治療の有効性を評価し適用範囲を確認する。
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研究実績の概要 |
本年度は糸球体内皮バリア機能に対するAGPの保護効果を検討した。具体的には、AGPの糸球体バリア機能における内因性AGPの寄与を明らかにすべく、WT及びAGP KOの長期飼育を行なった。その結果、WTとAGP KOの間に生存率、体重、アルブミン尿、血圧、ネフリン発現に差はなく、腎組織学的評価においても変化は観察されなかった。よって、内因性AGPは健常状態 (若年齢-中年齢) において糸球体バリア機能への影響は少ないことが示唆された。そこで、アドリアマイシン(ADR)抵抗性であるC57BL/6系統マウスに対してADRを投与した結果、WTではアルブミン尿が生じなかったのに対し、AGP KOにおいてはADR投与7日後からアルブミン尿の上昇傾向が示され、ネフリン発現はWTと比較し有意に低下した。さらに、ADR投与21日後においては、WT+ADR群と比較し、AGP KO+ADR群で有意なアルブミン尿の上昇が観察された。この時、F4/80免疫染色、炎症性サイトカイン、CD163発現はWT+ADR、AGP KO+ADR群で変化は見られなかった。加えて、ADR投与21日後においてWT+ADR群及びAGP KO+ADR群ともに健常WTと比較し有意に糸球体ネフリン発現が減少した。これらの結果より、AGP KO+ADR群でアルブミン尿が上昇した機序には、炎症とネフリン発現は関与していない可能性が示唆された。そこで、糸球体中AGP局在を評価した結果、WT+ADR群ではAGP KO+ADR群と異なり糸球体にAGPの存在が認められた。すなわち、AGPは糸球体保護的に働くことが示された。従って、内因性AGPは健常状態では寄与が少ないものの、糸球体障害時には糸球体保護的に働き、アルブミン尿抑制作用を有することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AGP KOマウスを用いて、腎障害におけるAGPの糸球体バリア機能の一旦を明らかにすることが出来たため、実験計画は概ね順調に進呈していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の内容で論文化を目指す。また、AGP KOマウスの表現型解析の結果より、脂質代謝異常が観察されたため、AGPによる脂質代謝制御の分子基盤解明を目指す。従来、腎病態と脂質代謝との関連が強く示唆されていることから、AGPによる脂質代謝制御の解明は病態生理の理解と治療戦略の開発に重要であると思われる。
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