研究課題/領域番号 |
21K19407
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊池 章 大阪大学, 感染症総合教育研究拠点, 特任教授(常勤) (10204827)
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研究分担者 |
松本 真司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20572324)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | Wnt5a / 線維芽細胞 / 炎症 / 大腸がん / 1細胞シーケンス / 大腸炎 / TGFβ / Wntシグナル / 腸管炎症 |
研究開始時の研究の概要 |
私共は、これまでにWnt5aは腸管炎症時に腸管上皮の直下の間質に限局して存在する特定の線維芽細胞亜集団に発現することや、AOM/DSS誘導性マウス大腸がんモデルにおいては、がん細胞周辺にWnt5a陽性細胞が集簇し、Wnt5aをノックアウトするとAOM/DSS誘導性大腸がんの増殖が抑制することを見出した。そこで、大腸がん組織の線維芽細胞の1細胞RNAシーケンス解析を行ったところ、Wnt5a陽性線維芽細胞は、特徴的な遺伝子発現パターンを示すことが判明した。本研究はWnt5a陽性線維芽細胞の実態を明らかにすることにより、炎症ならびに腫瘍病態における線維芽細胞のリモデリングを理解する端緒となる。
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研究成果の概要 |
正常大腸、炎症大腸、大腸がん由来の線維芽細胞の経時的変化を、1細胞RNAシーケンスの結果を用いて統合解析した。マウス大腸がんの病態形成過程において誘導されるがん関連線維芽細胞(CAF, cancer-associated fibroblast)のうち、Wnt5a依存的に維持されるものとしてtumor-promoting CAF (tCAF)を同定した。Wnt5aがTGFβ/PPARシグナルの制御を介して、tCAFの性状維持に寄与していることが示唆され、Wnt5aノックアウトにより腫瘍形成が抑制されたことと合わせて、CAFにおけるWnt5a発現の意義が明らかになった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
Wnt5a発現線維芽細胞は正常組織では大腸陰窩の頂部に限局しているが、がん化の過程で腫瘍全層に広がりtCAFと近接しており、空間的な相互作用の強さも示唆された。一方、がんに至る過程で大腸組織は炎症病態を介するが、Wnt5a発現線維芽細胞の一部は炎症誘導性の線維芽細胞サブタイプinflammatory fibroblast (Inf2)に移行し、TGFβ1を強く発現したことから、tCAF活性化のトリガーはInf2に由来すると考えられた。以上より、炎症から腫瘍に至る病態において、Wnt5a発現線維芽細胞を中心とした線維芽細胞集団の時空間的リモデリングの制御機構を明らかにできた。
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