研究課題/領域番号 |
21K19514
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
松村 貴由 自治医科大学, 医学部, 教授 (80436485)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | シングルセル解析 / 老化 / 造血幹細胞 / シングルセルRNAシークエンシング / シングルセルATACシークエンシング |
研究開始時の研究の概要 |
老化は多くのがんにおいて最大の危険因子です。これまでの研究により、全ての血液細胞の元となる造血幹細胞の老化には個々の幹細胞ごとに大きな違いがあることがわかっています。そのため、その全体像を理解するためには造血幹細胞1個1個ごとの違い、異質性、不均一性を踏まえた解析が不可欠です。本研究では、1個1個の造血幹細胞のDNAとRNAを同時にバーコード化するという最新実験手法を用い、造血幹細胞老化の不均一性を克服し、その本質を明らかにすることをめざします。
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研究実績の概要 |
造血幹細胞の老化は悪性腫瘍のみならず心血管疾患の危険因子にもなる。造血幹細胞の老化には様々な内的要因と外的要因が複合的に関与しているが、外的因子の老化への影響には個々の幹細胞ごとに違いがみられ、その全体像を理解するためには造血幹細胞の異質性を踏まえた解析が不可欠である。しかし、既存の技術では単一細胞からゲノム解析とエピゲノム解析を同時に行うことができなかった。 本研究ではエマルジョン化による単一細胞のDNAとRNAの同時バーコード化という新しい手法により、1個の細胞からゲノム解析とエピゲノム解析を同時に行う新技術、単一細胞(シングルセル)RNAシークエンシング(RNA-seq)と単一細胞(シングルセル)ATACシークエンシング(ATAC-seq)の同時解析の手法を確立すること、および、この新技術を用いて造血幹細胞老化の異質性を克服し、その本質を明らかにすることを目的としている。 2年間終了時点までに、単一細胞のDNAとRNAの同時バーコード化の条件検討を行い、ほぼ満足のいく結果が得られた。この条件は生物種ごと細胞種ごと微調整が必要であるが、その点についてもある程度の目途がついた。また、次世代シークエンサーで収集したシングルセルRNA-seqデータとシングルセルATAC-seqデータの解析法についてもある程度満足できる解析アルゴリズムを確立できたと考えている。 若年マウスから得られた造血幹細胞と老年マウスから得られた造血幹細胞の比較にて、老化造血幹細胞を特徴づける遺伝子変化、エピゲノム変化もすでに捉えられている。さらに、老化造血幹細胞の中で、より老化が進んでいると思われる細胞集団と比較的機能が保たれていると思われる細胞集団を特定することにも成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、2年間終了時点までに、エマルジョン化による単一細胞のDNAとRNAの同時バーコード化の条件検討を行い、ほぼ満足のいく結果が得られた。具体的には、DNAとRNAの品質を生化学的およびバイオインフォマティクス(生物統計学)的に確認し、どちらもほぼ満足できる品質であることを確認した。この条件は生物種ごと細胞種ごと微調整が必要であるが、その点についてもある程度の目途がついた。また、次世代シークエンサーで収集したシングルセルRNA-seqとシングルセルATAC-seqのデータ解析法についてもある程度満足できる解析アルゴリズムを確立できたと考えている。特に、シングルセルRNA-seqの解析については有意義なデータが得られている。しいて言えば、シングルセルATAC-seqの解析については、費やした費用に見合うほどの情報が得られたか微妙な部分も残されており、これが本手法のそもそもの限界なのか、解析法を見直すことで改善の余地があるのか、最終年度に検討したい。 若年マウスの造血幹細胞と老年マウスの造血幹細胞の比較にて、老化造血幹細胞を特徴づける遺伝子変化、エピゲノム変化もすでに捉えられている。さらに、老化造血幹細胞の中で、より老化が進んでいると思われる細胞集団と比較的機能が保たれていると思われる細胞集団を特定することにも成功している。さらに、その集団を前向きに抽出するために必要な表面マーカー候補の選出もすでに終了している。 全体として、シングルセルRNA-seqとシングルセルATAC-seqの同時施行の技術的部分はほぼ確立できたと考えており、本手法で得られた知見が本当に妥当なものであるかを検証することが最終年度の課題と考えている。 以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画ではエマルジョン化による単一細胞のDNAとRNAの同時バーコード化という新しい実験手法により、1個の細胞からゲノム解析とエピゲノム解析を同時に行う新しい技術、単一細胞(シングルセル)RNAシークエンシング(RNA-seq)と単一細胞(シングルセル)ATACシークエンシング(ATAC-seq)の同時解析の手法を確立すること、および、この新技術を用いて造血幹細胞老化の異質性を克服し、その本質を明らかにすることを目的としている。 2年間終了時点までに、特にサンプル調整の部分についてはほぼ実験手法は確立した。バイオインフォマティクス(データ解析)については、上述の通り、シングルセルRNA-seqのデータ解析についてはすでに有意義なデータが得られているが、シングルセルATAC-seqの解析については、費やした費用に見合うほどの情報が得られたか微妙な部分も残されており、これが本手法のそもそもの限界なのか、解析法を見直すことで改善の余地があるのか、最終年度に検討したい。 若年マウスの造血幹細胞と老年マウスの造血幹細胞の比較にて、老化造血幹細胞を特徴づける遺伝子変化、エピゲノム変化はすでに捉えられている。さらに、老化造血幹細胞の中で、より老化が進んでいると思われる細胞集団と比較的機能が保たれていると思われる細胞集団を特定し、その集団を前向きに抽出するために必要な表面マーカー候補の選出もすでに終了している。最終年度は、老化マウスの造血幹細胞を今回の研究で特定された表面マーカーで前向きに選別し、実際に造血幹細胞の機能に違いがあるかを種々の手法で確認していく予定である。本解析で得られた知見を他の実験手法で確認することで、本解析の有用性を証明したい。
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