研究課題/領域番号 |
21K19596
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
波多 賢二 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (80444496)
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研究分担者 |
宇佐美 悠 大阪大学, 大学院歯学研究科, 講師 (80444579)
奥崎 大介 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (00346131)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | シングルセル解析 / 骨格系細胞 / 骨格系幹細胞 / 骨格形成 / 幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
骨格形成や骨・軟骨の再生において中心的役割を担う骨芽細胞および軟骨細胞は、骨格系幹細胞をその起源とする。したがって、骨格形成の分子メカニズムの理解やそれを基盤とする効率的な骨・軟骨再生法の確立には、骨格系幹細胞の細胞特性や分化制御機構の解明がカギとなる。本研究では、1細胞レベルでの時間的遺伝子発現解析と空間的な遺伝子発現解析を統合することで、骨組織の時空間的トランスクリプトミクスを行い、骨格系幹細胞のマーカー遺伝子の同定と持続的維持機構の解明に挑戦する。さらに、骨格系幹細胞から軟骨細胞および骨芽細胞への分化の分岐点を制御する遺伝子ネットワークを明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度は10xGenomics社によってプラットフォーム化され市販されているVisium空間的遺伝子発現解析システムを用いて空間的トランスクリプトミクスを中心に解析を行った。まずはじめにE14.5マウス脛骨の凍結切片から、スライド上のDNAスポットへRNAを抽出するための細胞透過酵素の反応時間を検討し、酵素処理時間を60分とした。そして、Visium Gene ExpressionスライドにE14.5マウス脛骨の凍結切片を貼付し、スライドの位置情報を含んだDNAバーコードを持ったライブラリーが作製される。得られたライブラリーを3億ペアリード/サンプルで解析し、10X GenomicsのソフトウェアであるSpace Ranger解析パイプランとLoupe Browserによる可視化を行い、E14.5マウス脛骨の遺伝子発現マップを作製した。その結果、脛骨の細胞群を遺伝子発現により9つの細胞クラスターに分類することに成功した。そして、筋肉組織および皮膚組織を除外し骨組織のみを指定し再クラスタリングを行うとともに、細胞クラスターを脛骨の組織切片と比較し空間的情報とをオーバーラップさせた。最終的に、成長板軟骨の骨端部に骨格系幹細胞と推測される細胞集団を見出した。これらの細胞クラスターに特異的な遺伝子を抽出したところ、Barx1、GDF5、Ccn3などが同定され、重用なことに昨年度シングルセルRNA-seqにおいて骨格系幹細胞と推測された遺伝子群と一致していた。また、これまで不明な点が多かった肥大化軟骨細胞に特異的な遺伝子群も検出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はVisiumによる空間的トランスクリプトーム解析を行い、骨格系幹細胞から軟骨細胞まで分化段階の異なる細胞クラスターを組織学的に分類することに成功したため、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、昨年までのシングルセル解析ならびに空間的トランスクリプトーム解析から明らかとなった遺伝子の機能解析を行う。まず、in situハイブリダイゼーション法ならびに免疫染色法により、成長板軟骨を含む骨組織における発現部位を検討する。次に、骨芽細胞分化および軟骨細胞分化における上記の遺伝子の役割をin vitroで検討する。具体的には、レンチウィルスシステムを用いて、未分化間葉系細胞株C3H10T1/2に、上記転写因子を過剰発現、または遺伝子ノックダウンして、骨芽細胞分化および軟骨細胞分化に対する効果をRT-qPCR法により評価する。これらの解析により、骨芽細胞分化および軟骨細胞分化に関与することが明らかとなった遺伝子を骨格系幹細胞特異的転写因子として、in vivoでの解析を進める。 同定した骨格系幹細胞に特異的転写因子の個体レベルでの骨格形成における役割を明らかにするために、CRISPR/Cas9ゲノム編集法を用いてノックアウト(KO)マウスを作製し、病理組織学的に骨形成への影響を検討する。KOマウスが胎生早期致死で解析が困難な場合は、当該遺伝子のfloxマウスを作製し、四肢に特異的なPrx1-Creマウスと交配して、四肢特異的コンディショなるKOマウスを作製して、骨格形成の表現型を解析する。さらに、当該遺伝子の抗体を用いたChIP-seq解析とKOマウス由来の細胞を用いたRNA-seq解析行い、当該遺伝子の遺伝子発現ネットワーク機構を明らかにする。
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