研究課題/領域番号 |
21K19942
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
相松 慎也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (50908829)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ヒューム / メタ倫理学 / 道徳判断 / 感情 / 言語 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、インターネット、とりわけSNSの普及とともに、誰もが誰に対しても道徳判断――人のふるまいに関する善悪・是非の判断――を公に表明することが容易になっている。このことは、権力者への強力な監視・制裁機構として機能する一方で、感情的な衝動と行き過ぎた言語表現による止めどない個人攻撃の温床ともなっている。 本研究では、こうして影響力を増している道徳判断の本性と実態を解明するべく、18世紀スコットランドの哲学者デイヴィド・ヒュームの感情主義的道徳哲学と現代のメタ倫理学を軸として、道徳判断のとくに心理面と言語面およびそれらの交錯を分析する。これにより、道徳判断の適正な使用の条件を提示することを目指す。
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研究成果の概要 |
本研究は、18世紀スコットランドの哲学者デイヴィッド・ヒュームの道徳哲学と現代メタ倫理学に依拠しつつ、道徳判断(善悪・是非の判断)の心理的・言語的な本性について考察した。その成果として、第一に、道徳感情主義とされるヒュームにおいてさえ、道徳感情は言語によって規定されているという可能性を示すことで、道徳判断における言語の優位性を明らかにし、第二に、そのように言語ベースで成立する道徳判断には「客観的に指令的な性質」を対象に帰属させる機能が備わるが、現実世界にそのような性質は存在しえない、という可能性を示すことで、ヒュームの経験論哲学からある種の道徳的錯誤説が導き出されうることを明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、従来のヒューム研究において等閑視されがちだった、道徳判断における言語の重要性を具体的に示し、むしろ道徳感情こそ二次的なのだという新たな解釈を提示したこと、そしてその解釈のもとに、ヒュームの錯誤説解釈を従来にない一貫した仕方で提示したことに学術的意義がある。また、近年SNSの普及により、誰もが誰に対しても容易に道徳判断を表明できるようになり、その結果、道徳判断は、客観的な装いを持つ言葉による感情的な攻撃の手段としても使えることが明るみになってきた。言語と感情の両面から道徳判断を分析した本研究の成果は、そうした道徳判断の負の側面を分析・緩和するための1つの足場となるだろう。
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