研究課題/領域番号 |
21K20368
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0203:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
須田 祐介 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (70910321)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ガンマ線バースト / 超高エネルギーガンマ線 / 大気チェレンコフ望遠鏡 / MAGIC / CTA / 高エネルギーガンマ線 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、ガンマ線バーストの新しい観測手段として確立した大気チェレンコフ望遠鏡を用い、ガンマ線放射機構の解明に迫ることである。近年、MAGIC望遠鏡がガンマ線バーストからテラ電子ボルトに達する高エネルギーガンマ線を初検出したことを皮切りに残光の新たな物理が見えはじめ、今後はさらに観測事実を積み上げる必要がある。本研究では、MAGICで新たに観測したガンマ線バーストのデータを詳細に解析し、残光でのガンマ線放射機構を探求する。また、次世代大気チェレンコフ望遠鏡群CTAの大口径望遠鏡の初号基によるガンマ線バースト初検出に向けたデータ解析やMAGICとの共同観測のための解析手法も開発する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、MAGIC望遠鏡が観測したガンマ線バースト(GRB)のデータ解析やCTA LST初号基(LST-1)とMAGICの同時観測データの解析手法の開発を引き続き行った。また、MAGIC観測シフトとLST-1リモート観測シフトを通し運用に貢献した。 大気チェレンコフ望遠鏡が検出した3例目のGRBで、MAGICとしては2例目のGRB 201216Cの解析を行った。この天体は赤方偏移パラメータが1.1と見積もられ、大気チェレンコフ望遠鏡で観測された最遠方の天体である。そのため、数100 GeV以上のガンマ線は銀河系外背景光により強く吸収を受けるため低エネルギーに特化したMAGICデータ解析を行い、完遂した。得られたスペクトルや光度曲線といった結果を他波長観測データと組み合わせ、理論的解釈を加え論文化を進めた。MAGICが高エネルギーガンマ線放射の兆候を捉えたGRB 201015Aは、比較的暗いGRBで上のGRBと同様にMAGICにとって挑戦的な天体である。私は研究チームリーダーとしてプロジェクトを推進し、解析カットの最適化やMAGICコラボレーション会議にて発表を行うなどして解析を完遂した。このGRBについても、他波長観測データと組み合わせて論文化を進めた。GRBの観測的研究を含むMAGICコラボレーションの最新成果について国際会議で発表した。 観測感度向上に有効なMAGICとLST-1の同時観測について、解析パイプラインを構築する国際チームのまとめ役の一人としてプロジェクトを推進した。モンテカルロシミュレーションや標準光源であるかに星雲の実データを用いてパイプラインを完成させ、MAGIC (LST-1)単体観測に比べて30% (40%)暗い天体まで検出できることがわかり、LSTアレイが完成するまでの強力な観測体制であることを示した。論文化を進めつつ、成果を国内学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大気チェレンコフ望遠鏡によるGRB検出の例は依然少なく、GRB 201216Cは大気チェレンコフ望遠鏡で観測された最遠方の天体、ガンマ線放射の兆候を得たGRB 201015Aは比較的暗いGRBであり、どちらも入念な解析・系統誤差の評価や理論的解釈が求められ、本年度中の論文発表が達成できなかった。しかしながら、Dr. Berti、Dr. Fukamiや京都大学大学院生らと協力し、低エネルギーに特化したMAGICデータ解析や解析カットの最適化などを行い解析を完遂し、得られたスペクトルや光度曲線といった結果を他波長観測データと組み合わせ、理論的解釈を加え論文化を進めることができた。特にGRB 201015Aでは研究チームリーダーとしてプロジェクトを推進した。GRBの観測的研究を含むMAGICコラボレーションの最新成果について国際会議で発表し議論を行なった。 MAGICとLST-1の同時解析パイプラインはDr. Sitarekや東京大学大学院生らと共同で開発を進めた。観測サイトであるラ・パルマ島での2021年9月から約3ヶ月間に渡る噴火活動による観測中止とその後のデータ品質の変化により、開発に使用できる観測データが限られたため、開発に想定よりも多くの時間を要した。同時解析によりMAGIC単体解析では除去されていた事象をLST-1の情報を使い救い出すことで有効面積が拡大すること、また3台でのステレオ観測により背景事象除去能力が向上することがわかった。これらにより、MAGIC (LST-1)単体観測に比べて30% (40%)暗い天体まで検出できることがわかり、LSTアレイが完成するまでの強力な観測体制であることを示した。本年度中の論文発表を達成できなかったが、成果を国内学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
GRB 201216CとGRB 201015Aの成果をそれぞれ論文として発表する。得られた最新の知見と先行研究結果を基にガンマ線バーストのガンマ線放射機構の謎に迫り、国際学会において発表し広く議論を行う。また、MAGICとLST-1による同時観測のための同時解析パイプライン開発とその性能評価に関する成果を論文として発表し、国際学会において発表し議論を行う。開発したパイプラインを活用し同時観測を行ったガンマ線バーストのデータ解析も行う。
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