研究課題
研究活動スタート支援
本研究の目的は、ガンマ線バーストの新しい観測手段として確立した大気チェレンコフ望遠鏡を用い、ガンマ線放射機構の解明に迫ることである。近年、MAGIC望遠鏡がガンマ線バーストからテラ電子ボルトに達する高エネルギーガンマ線を初検出したことを皮切りに残光の新たな物理が見えはじめ、今後はさらに観測事実を積み上げる必要がある。本研究では、MAGICで新たに観測したガンマ線バーストのデータを詳細に解析し、残光でのガンマ線放射機構を探求する。また、次世代大気チェレンコフ望遠鏡群CTAの大口径望遠鏡の初号基によるガンマ線バースト初検出に向けたデータ解析やMAGICとの共同観測のための解析手法も開発する。
本研究は大気チェレンコフ望遠鏡を用いたガンマ線バースト(GRB)のガンマ線放射機構の解明を目的としている。MAGICが発見したGRBのTeVガンマ線残光放射はシンクロトロン自己コンプトン放射機構(SSC)で自然に説明できるが、これが普遍的な性質であるのかなどを理解するためMAGICが新たに観測した2つのGRBについて研究を進めた。1つは赤方偏移パラメータ 1.1で発生したGRB 201216Cで、MAGICは残光放射の検出に成功した。低エネルギーに特化した解析を完遂し、多波長モデリングにより、これまでのTeVガンマ線検出を伴うGRBと同様に、SSCで自然に説明できることが判明した。一方で、ジェットが突き進む周囲の物質の密度分布としてこれまでの一様密度とは異なり星風的な分布を強く示唆する結果を得た。星風的な密度分布はこのGRBを含む即時放射の継続時間が長い種族において期待されるものである。成果を責任著者の一人として論文発表、国際会議において報告した。もう1つのGRBはMAGICがTeVガンマ線放射の兆候を捉えたGRB 201015Aであり、データ解析とモデリングを完了し成果を国内学会等で報告し、論文化を進めた。感度向上を目指し、MAGICと次世代ガンマ線天文台CTAのLST初号基(LST-1)との同時観測のための解析パイプラインの構築を国際チームのまとめ役の一人として推進した。完成した同時解析により、MAGIC (LST-1)単体観測に比べ30% (40%)暗い天体まで検出できることを明らかにし、性能評価論文を責任著者の一人として発表し、成果を国際学会にて報告した。この同時解析はCTA時代におけるステレオ解析のパスファインダーともいえ、こうした貢献が認められ、他3名の共同研究者とともにMAGICコラボレーションのFlorian Goebel Prize 2023を受賞した。
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すべて 国際共同研究 (15件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 527 号: 3 ページ: 5856-5867
10.1093/mnras/stad2958
Astronomy & Astrophysics
巻: 680 ページ: A66-A66
10.1051/0004-6361/202346927