研究課題/領域番号 |
21K20570
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0601:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
新庄 莉奈 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任助教 (10908841)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | メタン酸化細菌 / イネ / コンソーシアム / メタン |
研究開始時の研究の概要 |
水田はイネの主要な生産現場である一方、温室効果ガスであるメタンの大きな発生源である。メタン酸化細菌はメタンを唯一のエネルギー源・炭素源として生育する好気性微生物であり水田からのメタン発生低減への活用が期待されるが、農業現場においてメタン酸化細菌の利用には未だ至っていない。本研究ではイネ根圏でメタン酸化細菌と協調的にはたらく従属栄養微生物の機能や相互作用について分離培養やゲノム解析を通じて明らかにするとともに、それらを共同体(コンソーシアム)としてイネに共接種することで安定した定着性を実現し、メタンの排出量削減や窒素など養分獲得の向上を通じたイネの生育促進を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は、16S rRNAアンプリコン解析による集積培養液の菌叢解析と、メタン酸化細菌と従属栄養細菌のイネへの共接種試験を行った。無窒素施肥水田圃場にて栽培したイネの根に由来する集積培養液(2-5次)からDNAを抽出し、16S rRNAアンプリコン解析を実施することで微生物群集構造の経時変化を調査した。その結果、タイプIIメタン酸化細菌(Methylocystaceae科)が優占する培養液では、Hyphomicrobium属やTerrimonas属の従属栄養細菌が集積され、タイプIメタン酸化細菌(Methylococcaceae科)が優占する培養液ではFlavobacterium属に近縁な従属栄養細菌が集積されることが明らかとなった。以上の結果から、培養液中に優占するメタン酸化細菌種によって共存する従属栄養細菌種が異なることが示された。 次に、メタン酸化細菌を従属栄養細菌と共にイネ苗に接種し、従属栄養細菌がメタン酸化細菌の定着やイネの養分獲得、生育に及ぼす影響を調査した。メタン酸化細菌(Methylocystis属)とイネの生育促進作用を持つ従属栄養細菌(Burkholderia属)の菌懸濁液をそれぞれ単独または混合してイネ苗に接種し、出穂期まで屋外でポット栽培した。その結果、イネの乾物重及び窒素濃度はBurkholderia属を単独または共接種した区において増加傾向にあったが、根におけるメタン酸化細菌遺伝子(pmoA)コピー数は処理区間に差はなかった。従って、従属栄養細菌はイネに定着し生育促進効果をもたらしたが、Methylocystis属メタン酸化細菌は根に定着しなかったと考えられた。今後、接種方法や栽培条件を再検討し、引き続きイネへの効果を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
集積培養液の菌叢解析は計画通りに進めることができ、メタン酸化細菌と共存する従属栄養細菌種を絞り込むことができたが、イネへの菌の接種試験は更なる条件検討が必要と考えられるため。また単離した従属栄養細菌のゲノム解析が未実施であるため。
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今後の研究の推進方策 |
単離した従属栄養細菌の全ゲノム解析を実施するとともに、集積培養液のメタゲノム解析を行い、メタン酸化細菌との相互作用に関わる従属栄養細菌の遺伝子群を明らかにする。さらに、メタン酸化細菌と従属栄養細菌のイネへの接種方法や栽培条件を再検討する。具体的には、菌の接種回数や土壌の種類の変更を予定している。
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