研究課題/領域番号 |
21K20675
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0703:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊藤 公一 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特任助教 (80768721)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 送粉者 / 感染症 / 繁殖戦略 / 性表現 / 繁殖生態学 / 花形質の進化 / 感染症数理モデル / 送粉 / ゲーム理論 / 性的対立 |
研究開始時の研究の概要 |
花にとってハチやアブなどの送粉者は花粉を運んでくれる重要な存在だが、彼らは花粉だけでなく花に悪影響を与えるような病原菌をも同時に運んでいることが近年明らかにされている。このような送粉者が広げる植物の感染症では、送粉者を受け入れるほど感染リスクも高まるため、花にとっては送粉者を受け入れるかどうかにジレンマが生じることになる。本研究では、そうしたジレンマが花の匂いや形、咲かせる期間などの「花形質」の進化に及ぼす影響に注目した研究を行う。感染症の数理モデルと植物の送粉理論を組み合わせることで、送粉者が広げる植物の感染症が持つ特徴と花形質への進化的影響について、その一般的法則性の理論的に明らかにする。
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研究成果の概要 |
本研究では、送粉者を介して花から花へと広がり、花に対して負の影響をもたらす微生物の持つ影響について注目した。こうした微生物を広義の「感染症」とみなし、その存在が植物の繁殖成功や花形質の進化に与える影響について研究を行った。媒介者を介して広がる感染症を扱う疫学理論モデルを拡張して、感染症と植物の繁殖成功を同時に推定可能な理論モデルを開発することに成功した。さらに、開発した理論モデルを用いた解析を通して、送粉者を介して広がる感染症が持つ代表的な特徴を明らかにするとともに、こうした広義の「感染症」が花の繁殖戦略にまで影響しうる可能性を明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
これまでの花の感染症の研究は農学的な側面からの研究が中心であり、花の生態学的側面への影響についての研究は不十分であった。また、送粉者が花の適応度に影響を及ぼしうる微生物を花から花へと広げていることが近年明らかにされつつあるが、そのことが持つ生態的な意味については十分明らかにされていなかった。本研究で開発した数理モデルは、花の感染症が植物の進化や生態的特徴にもたらす影響を定性的に解明する上で重要な基盤となるとともに、これまで見落とされてきた送粉者による微生物の運搬が植物にもたらす影響について明らかにするものである。更に、花の性表現の進化など植物生態学上の重要な課題の解決にも寄与するものである。
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