研究課題
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有尾両生類であるイモリでは、脊髄切断後に組織の再構築が起こり、ほぼ完全に神経機能が再建される。しかし、この現象を担う細胞(再生細胞)が有する分化多能性と組織再構築能、およびその基盤となる分子メカニズムは不明である。そこで本研究では、イモリ脊髄損傷時の生体内の状態を可能な限りin vitroで再現することにより、高い分化能を維持したまま再生細胞を培養する方法を開発し、その分化可能性を検証する。更に、本再生細胞の遺伝子発現解析結果に基づき、マウス神経幹細胞でイモリ再生細胞の表現型を再現させ、これをマウス脊髄損傷モデルに移植し神経再生への関与を評価する。
本研究課題の目的は、イモリにおいて損傷した脊髄の再生を担う細胞の分離培養法を開発することと、再生細胞のmultipotencyの維持や組織再構築能に関与する分子メカニズムを明らかにすることである。前年度までに、イベリアトゲイモリの中枢神経系組織から神経幹細胞を回収し培養する方法について論文を公表したが、その後、幹細胞性をより厳密に証明するために、得られた神経幹細胞から形成された細胞塊(ニューロスフィア)の継代培養を行い、繰り返し継代したあとでも未分化性とmutipolencyが維持されるか検証をおこなってきた。この検証は現在も進行中であるが、その過程で、イモリ神経幹細胞には哺乳類のそれとは異なる性質をもつことを示唆する実験結果が得られた。すなわち、培地に血清を投与した際には哺乳類の神経幹細胞にはニューロンやグリア細胞への分化誘導がかかるが、イモリでは分化誘導はかからずにニューロスフィア形成が亢進した。その作用機序は不明だが、イモリの高い再生能力に関連する性質である可能性がある。また、前年度までに、イモリとマウスのニューロスフィアのトランスクリプトーム比較のためのRNA-seqを完了させたが、本年度はイモリの高い再性能をもたらす遺伝子の特定を目的としたシークエンスデータの解析を進めた。現時点ではイモリで特異的に高発現する遺伝子の特定には至ってはおらず、上述の、血清に対する特殊な応答に関わる遺伝子の探索と併せて、現在解析中である。
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