研究課題/領域番号 |
21K20747
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0802:生体の構造と機能およびその関連分野
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
関 亮平 関西医科大学, 医学部, 助教 (40746624)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 有尾両生類 / 脊髄 / 再生 / 神経幹細胞 / ニューロスフィア / 脊髄再生 / 脊髄損傷 / 分化多能性 |
研究開始時の研究の概要 |
有尾両生類であるイモリでは、脊髄切断後に組織の再構築が起こり、ほぼ完全に神経機能が再建される。しかし、この現象を担う細胞(再生細胞)が有する分化多能性と組織再構築能、およびその基盤となる分子メカニズムは不明である。そこで本研究では、イモリ脊髄損傷時の生体内の状態を可能な限りin vitroで再現することにより、高い分化能を維持したまま再生細胞を培養する方法を開発し、その分化可能性を検証する。更に、本再生細胞の遺伝子発現解析結果に基づき、マウス神経幹細胞でイモリ再生細胞の表現型を再現させ、これをマウス脊髄損傷モデルに移植し神経再生への関与を評価する。
|
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、イモリ脊髄損傷後にその再生を担う細胞(以下、再生細胞と呼ぶ)の分離培養法を開発することと、再生細胞の分化多能性の維持や組織再構築能の発揮に係る細胞内シグナル経路や接着分子を明らかにすることである。当該年度は、まず前年度の成果についての論文を執筆し、投稿・公表した。当該論文の内容は、イベリアトゲイモリの中枢神経系組織から神経幹細胞を回収し培養する方法を確立した、というものである。具体的には、マウス等の哺乳類における神経幹細胞の一般的な培養法(ニューロスフィア法)をアレンジした手法を用いることで、イモリの脳と脊髄に由来する細胞からもニューロスフィア様の細胞塊が形成されることを示した。さらに、その細胞塊を構成する細胞が神経幹細胞のマーカータンパク質を発現することと、ニューロンやグリア細胞へと分化することを明らかにし、神経幹細胞としての性質を備えていることを示した。現在、幹細胞性をより厳密に証明するために、得られた細胞塊(ニューロスフィア)の継代培養を行い、繰り返し継代したあとでも未分化性と分化多能性が維持されるか検証中である。 加えて、当初の計画を変更し、脊髄を再生できるイモリと再生できないマウスの神経幹細胞の遺伝子発現プロファイルの比較解析を行うこととした。これにより、イモリ特異的に高発現している遺伝子や活性化しているシグナル経路を見つけ出し、さらに再生能力との関連を実験的に示すことが狙いである。現在までに、上記方法で培養したイモリ由来のニューロスフィアと、マウス由来のニューロスフィアからtotal RNAを抽出し、RNA-seqを実施した。現在、シークエンス結果のデータ解析を実施している最中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イベリアトゲイモリの神経幹細胞の培養法を確立することができ、その内容を論文として公表することができたものの、論文の執筆や査読対応に時間を要したため、その分実験が滞った。また、当初の研究計画を変更したことで、当該年度に予定していた実験が後回しになったことも遅れの原因である。ただし後者は、イモリの再生能力に関わる遺伝子を直接的にスクリーニングするための計画変更であり、これにより結果的に本研究がより進捗するものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次の3項目を実施する。 (1)これまでに確立したイモリ神経幹細胞培養法が、長期培養(繰り返しの継代培養)にも適応可能かどうかを評価する。ニューロスフィアの継代処理を行い、再びニューロスフィアが形成されるかを調査するとともに、複数回の継代を経た後の細胞の分化多能性の有無を調査する。もし幹細胞性が失われるようであれば、培地へのイモリ血清の添加や、以下の(2)で特定された遺伝子の強制過剰発現を試み、イモリ幹細胞の長期培養方法を確立する。また、これまではニューロンとグリア細胞への分化能のみを調査してきたが、骨や筋肉等の中胚葉性の細胞への分化能の有無も解析したい。 (2)イモリとマウスの神経幹細胞の遺伝子発現プロファイルを比較し、イモリ特異的に高発現している遺伝子をスクリーニングする。候補遺伝子の中から実際にイモリの脊髄再生に関わるものを特定するために、ゲノム編集により培養下のイモリ幹細胞における当該遺伝子のノックアウトを行い、自己複製能と多分化能が減衰するかを評価する。さらに、ゲノム編集後の細胞を、脊髄損傷を施したイモリに移植することで、再生への寄与が正常な幹細胞に比べて量的・質的に低減するかを評価する。 (3)マウスの神経幹細胞に(2)で特定した遺伝子を強制発現させることで、マウスでのイモリ型再生の再現を試みる。(1)で新たに確立した培養方法でマウス細胞を培養することも有効であると期待している。培養条件下における幹細胞の挙動を解析するとともに、マウス脊髄損傷モデルに移植することで脊髄再生が更新されるかを評価する。
|