研究課題
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重症熱性血小板減少症候群 (Severe fever with thrombocytopenia syndrome, SFTS) は SFTS ウイルスがもたらすウイルス性出血熱の一つである。出血熱ウイルスの多くは単球系細胞を感染標的とするが、SFTS ウイルスはB細胞を感染標的とすることが分かってきた。しかし、B細胞はSFTSウイルスの既知の侵入レセプターを持たないため、なぜ SFTSウイルスが B細胞に感染できるのかが不明である。本研究では、 培養細胞や臨床検体の遺伝子発現解析と感染細胞動態の可視化からB細胞のウイルス感受性が増強される条件を決定し、 B細胞への感染機構を明らかにする。
ヒト体内におけるSFTSウイルスの感染標的となるB細胞は形質芽球に分化しつつある活性化B細胞である。この標的細胞がどのように誘導されるのかを明らかにするため、ヒト末梢血細胞へSFTSウイルス感染を行い、活性化B細胞が誘導されるかどうかを検証し、その誘導に必要な細胞種や分泌因子を探索した。末梢血細胞にSFTSウイルスを感染させた結果、SFTS患者における異型リンパ球と類似した表現型の活性化B細胞の誘導が観察された。興味深いことに末梢血B細胞のみへの感染であっても同様の活性化B細胞が誘導された。サイトカイン定量から、ウイルス感染単球からは分泌されないB細胞に特異的な分泌因子が検出された。
末梢血B細胞へのウイルス感染のみで活性化B細胞が増殖することから、その誘導にはSFTSウイルスのB細胞感染が重要であると考えられた。また、B細胞感染によって分泌されるサイトカイン・ケモカインが活性化B細胞の増殖を促すことが示唆された。これらの成果はSFTS患者の生体内におけるウイルス増殖と標的免疫細胞の動態の解明に寄与し、SFTS重症化機構の解明に貢献すると考えられる。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件)
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