研究課題/領域番号 |
21K20959
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0905:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 |
研究代表者 |
川添 准矢 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 腫瘍研究部, 研究員 (60911295)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 肝虚血再灌流障害 / 短鎖脂肪酸 / プロピオン酸 / イヌリン / 食物繊維 / 腸内細菌 / 腸内細菌叢 |
研究開始時の研究の概要 |
肝臓外科領域において、虚血再灌流障害(IRI)は間欠的肝血流遮断(Pringle法)や肝移植の際に生じる回避できない事象であり、IRIの予防・軽減は術後成績の向上と移植肝の保護のために重要な課題である。現在、外科手術領域では、Enhanced Recovery After Surgery (ERAS)に基づき周術期の栄養療法が実践されている。食物繊維であるイヌリンは、大腸において腸内細菌叢により有機酸産生を促し抗炎症作用を発揮する。本研究は、イヌリンおよび産生されるプロピオン酸に焦点をあて、抗炎症効果のメカニズム解析ならびに周術期イヌリン配合食摂取によるIRI抑制効果を検討する。
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研究成果の概要 |
肝虚血再灌流障害は、一時的に虚血状態にあった肝臓に血流が再開された際に惹起される組織障害である。今回我々は、マウスに水溶性食物繊維であるイヌリンを投与し肝虚血再灌流障害が軽減されたことを報告した。イヌリンを投与したマウスの腸内細菌叢において、短鎖脂肪酸であるプロピオン酸を産生するBacteroides acidifaciensの占める割合が有意に上昇し、プロピオン酸の門脈血中濃度が有意に上昇していたことを発見した。さらに、プロピオン酸をマウスに腹腔内投与した場合でも肝虚血再灌流障害は抑制された。 本研究では、イヌリンはプロピオン酸の産生を介して肝虚血再灌流障害を抑制することを示している。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
肝臓外科領域において、虚血再灌流障害は肝門部の間欠的肝血流遮断(Pringle法)や肝移植の際に生じる回避できない事象であり、虚血再灌流障害の予防・軽減は術後成績の向上と移植肝の保護のために重要な課題である。 今回の研究は、イヌリンによる肝虚血再灌流障害の抑制効果に関する世界で初めての報告である。そのメカニズムとして、腸内細菌によってイヌリンより生成される短鎖脂肪酸、中でもプロピオン酸が肝虚血再灌流障害の抑制に寄与していることを示し、短鎖脂肪酸の新たな有用性を提起するものである。 さらに、イヌリン配合経腸栄養剤はすでに市販されていることから、実臨床への応用も十分考えられ、社会的意義があると考える。
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