研究課題
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組織損傷後の急性痛を発端とした慢性疼痛は発生率が高く,その予防戦略の開発は急務である.このような慢性疼痛は末梢組織の炎症に起因する過剰な侵害刺激の入力と神経系の感作・可塑的変化が発生メカニズムに関与しており,組織損傷後早期に炎症を鎮静化し,急性痛を軽減するマネジメントが極めて重要である.そこで,本研究では超音波療法に着目し,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の塗布剤を用いた薬物療法と超音波療法によるコンビネーションプログラムが慢性疼痛の新規予防戦略として有用かを生物学的メカニズムも含めて解明する.そして,リハビリテーション医療の視点から慢性疼痛の予防戦略の開発に資する基礎データの提示を目指す.
本研究では,組織損傷後の侵害受容性疼痛を発端とした慢性疼痛の予防戦略の開発に資する基礎データの構築を目的に,膝関節炎発症後早期におけるNSAIDsとLIPUSのコンビネーションプログラム(フォノフォレーシス)による疼痛軽減効果とその生物学的効果について動物モデルを用いて検証した.結果,膝関節炎発症後急性期にフォノフォレーシスを適用すると,単独介入と比べて疼痛軽減効果が高く,その生物学的機序には炎症性マクロファージ数の減少といった滑膜炎の早期軽減が関与していることが示唆された.以上より,フォノフォレーシスは患部の炎症を抑制することで疼痛を早期に軽減し,慢性疼痛の予防に寄与することが示唆された.
骨折をはじめとした外傷や各種外科術後における慢性疼痛の発生率は30%程度と高く,その予防マネジメント戦略の確立が急務となっている.本研究の成果は,国内外でもほとんど検証されていない薬物療法と物理療法のコンビネーションプログラムの有効性を示す基礎的知見であり,学術的意義は高いといえる.また,消化器疾患や腎疾患を併発しているために非ステロイド性抗炎症薬による十分な鎮痛効果が期待できない高齢者などを含めた幅広い患者に適用できる超音波フォノフォレーシス療法の有効性を示す基礎データであり,社会的意義も高いといえる.
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