研究概要 |
生体高分子の水和は,それらの構造安定性や機能に重要な役割を担っている。特にタンパク質の溶媒和は,折畳みなどのタンパク質の等温平衡状態や濃度依存的な効果の決定因子である。また,細胞内は様々な高分子により極めて混雑した環境にあり,タンパク質は共存分子混雑環境で機能する様に設計されている筈である。混雑環境はタンパク質の平衡状態を変化させることに疑いはないが,タンパク質の折り畳みに関する研究の大半が希薄溶液中で行われてきたために,混雑環境効果に関しては議論が錯綜している。本研究は,高分子量共存分子(ポリビニルピロリドン:PVP)存在下でのタンパク質の折畳み機構を明らかにする目的で実施した。PVPの存在は,タンパク質に浸透圧を負荷する。放射光X線広角散乱により,卵白リゾチームの変性・折畳みを検討した結果,浸透圧の上昇は,分子内構造の揺らぎの抑制を伴った水和シェル密度の変化や,熱変性過程における変性中間状態,所謂モルテングロビュール状態を安定化させることを見出した。
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