研究課題
基盤研究(C)
C型肝炎ウイルス(HCV)のウイルス産生調節機構はHCV RNAレプリコン細胞やJFH1株を用いたウイルス産生系の進歩により、HCV生活環とウイルス増殖に必要な宿主因子の解析が可能となってきた。本研究ではHCV産生の分子機序を明らかにするために、HCV蛋白質と結合する宿主因子とその生理学的意義を解析した。まず、HCVコア蛋白質と結合する宿主因子hnRNPH1/H2/FとRNA結合の重要性について解析した。HCV RNAを添加したところ、コア蛋白質とhnRNPHの結合が阻害され、RNaseを添加すると結合が回復したことから、両者の結合にRNAが重要であると考えられた。hnRNPFにおいても同様の現象を認めた。この二つの因子が協調してウイルス産生を制御していることが示唆された。また、HCV NS5A蛋白質の新規結合因子として細胞内のユビキチンリガーゼp138、転写因子HNF-1a、ヒストンメチル基転移酵素SMYD3などを同定した。p138はHCVのNS5A蛋白質と相互作用するが、他のHCV蛋白質との相互作用は認められず、NS5A特異的な結合と考えられた。p138はNS5Aをユビキチン依存性に分解を促進し、ウイルス複製を制御することが示唆された。NS5A蛋白質とp138の結合部位を各々の欠損変異体を作製してマッピングを行った。両者の結合に重要な領域を同定するためには、更に欠損変異体を作製して詳細に解析する必要がある。また、NS5Aのユビキチン化部位を決定するために13種の点変異体を作製し解析を行い、複数箇所のユビキチン化部位を同定した。これらの研究はHCVの生活環と病原性の理解に貢献するものと考えられた。
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