研究概要 |
我々は、座位ウロダイナミクスでの、自然に近い連続蓄尿排尿に呼応した脳活動を、機能的近赤外線分光法(functional near-infrared spectroscopy, fNIRS)を用いて検討した。対象は、排尿筋過活動(DO)を有さない対照群5名(男性1名女性4名; 平均年齢61歳[38-70])と、DOを有する群4名(全例男性;平均年齢55歳[33-65])である。前頭葉外側面を関心領域とした酸化ヘモグロビン濃度(oxy-Hb)リアルタイム測定を、座位・閉眼・流水音(ホワイトノイズ)下ウロダイナミクス時に2度行った。初発尿意および最大尿意時に、右手を軽く挙上するよう指示した。その結果、対照群: 1)oxy-Hbは初発尿意より前から緩徐に増加, 2)oxy-Hbは蓄尿中緩徐に増加し排尿直後がピーク, 3)oxy-Hbは排尿中緩徐に低下, 4)排尿不可の者も、排尿企図後oxy-Hbは緩徐に低下, 5)賦活部位は両側前頭前野、特にBrodmann 8,10,46野で顕著であった。DO群: 6)初発尿意前のoxy-Hb増加が稀で、前頭前野賦活が弱い傾向がみられたが、その他は対照群と同様であった。すなわち、fNIRSを用いて、座位ウロダイナミクス時、自然に近い連続蓄尿排尿に呼応した前頭前野賦活を確認できた。さらに、抗コリン薬の投与前後で同様の検討を行ったところ、過活動膀胱(OAB)で低下していた前頭前野賦活が正常化する傾向を認めた。
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