研究課題/領域番号 |
22H00084
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山住 勝広 関西大学, 文学部, 教授 (50243283)
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研究分担者 |
根津 知佳子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (40335112)
冨澤 美千子 横浜美術大学, 美術学部, 教授 (90810680)
白數 哲久 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (80810415)
伊藤 大輔 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 教授 (40440961)
畠山 大 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10616303)
山田 直之 関西大学, 文学部, 准教授 (90825738)
浅野 吉英 豊岡短期大学, 通信教育部 こども学科, 講師 (00932576)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2022年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | 拡張する学校 / 文化・歴史的活動理論 / 拡張的学習理論 / 学校改革のチェンジラボラトリー / 変革的エージェンシー / 形成的介入 / チェンジラボラトリー / 学校改革 / 教師の専門性開発 / 学校改革の形成的介入研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、第1に、文化・歴史的活動理論と拡張的学習理論にもとづき、ポスト資本主義の新たな学校教育を実践者たちが自ら生み出していくような学校のあり方を、「拡張する学校」と名づけて理論的にモデル化する。 第2に、実践者たちが「拡張する学校」を自分たち自身で下から集団的にデザインし創造していくような拡張的学習を支援するとともに、実践者たちの変革的エージェンシーの生成を促進するような形成的介入の原理と方法を、新たな教育学研究の方法論として構築していく。 第3に、実践者と研究者が協働する学校改革への長期的な形成的介入研究を実施し、「拡張する学校」のモデルを具現化する典型的事例を創造する。
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研究実績の概要 |
本年度は、第1に、「理論レベル」での研究として、文化・歴史的活動理論と拡張的学習理論の枠組みにもとづく「拡張する学校」のモデル化のために、スタンダードな学校学習の伝統的なあり方である「カプセル化」された授業と学習の矛盾を分析した上で、「拡張的学習」が学校学習を「脱カプセル化」し、変革しうる新たな方向性であることを明らかにした。 本年度は、第2に、「方法論レベル」と「実践レベル」を統合した研究として、本研究のコアである「学校改革への形成的介入研究」を学校現場において本格的に実施に移し、実質的に推進した。そこでは、活動理論的な形成的介入の方法論にもとづく具体的な研究方法である「チェンジラボラトリー」を学校の教師たちと協働してフルスケールで実施するために、その方法論をいっそう明確化するとともに、学校現場での実施計画、一連の継続的な会合のプランと展開を練り上げた。 このチェンジラボラトリーでは、東京の成城学園初等学校において、教師たちと私たち研究者チームが協働して教育実験を構想し、それについて対話・討議していく会合(1回あたり約2時間から3時間)を、2023年3月から2024年3月におおよそ月1回のペースで全10回、連続して開催していった。チェンジラボラトリーの会合はすべて録画・録音し、トータルで25時間58分の協議のデータが得られた。 チェンジラボラトリーを通して、教師たちと私たち介入研究者は、<教師の指導による教科の授業>と、<区画化した教科の授業を脱カプセル化する教科横断的な探究学習>との間、あるいは<教科担任制にもとづく教科の授業研究>と<学校ぐるみの教科横断的なカリキュラム開発>との間の根本的な矛盾を明確化し、つかみ取っていった。そして、こした矛盾を乗り越えうるような、学校における新たなカリキュラムと教育方法のモデルとして、「探究学習」に関する新たな概念を協働で生み出していった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、本研究の「理論レベル」、「方法論レベル」、「実践レベル」の三つのレベルのいずれにおいても、当初の計画以上の進展を達成することができた。まず、「理論レベル」では、スタンダードな学校学習の根本的な矛盾を、その「カプセル化」ととらえた上で、「拡張的学習」が学校学習を「脱カプセル化」し、授業と学習を変革しうる新たな方向性であることを明らかにして、「拡張する学校」のモデル化をいっそう明瞭かつ具体的に進展させることができた。 「方法論レベル」では、文化・歴史的活動理論にもとづく「学校改革への形成的介入研究」を、学校現場で教師たちと実際に取り組む「チェンジラボラトリー」という具体的な研究方法に落とし込んで明確化することができた。 さらに、「実践レベル」では、活動理論的な形成的介入の最も中心的な研究方法であるチェンジラボラトリーを、フルスケールの形で、東京の成城学園初等学校において教師たちと私たち研究者チームにより、2023年3月から2024年3月におおよそ月1回のペースで全10回、連続して開催していった。チェンジラボラトリーの会合はすべて録画・録音し、トータルで25時間58分の対話・討議のデータが得られた。 このチェンジラボラトリーの実施と収集したデータによって、本研究のコアの目的である「実践者と研究者が協働する学校改革への長期的な形成的介入研究」を実質的に大きく進捗させることができた。本年度、このチェンジラボラトリーを実行することで、「拡張する学校」のモデルを具現化する典型的事例を創造すること、そして教師たちと研究者による協働の介入を通して教師たち自身が自分たちの教育実践の新たな概念を創造していくことの両面において、教育学研究のパラダイム転換へのきわめて意義あるアプローチを前進させることができた。 以上から、本研究は、当初の計画以上に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究の「理論レベル」、「方法論レベル」、「実践レベル」を統合しながら研究を継続的に発展させていく。また、これら、本研究の実質的な達成をまとめ、国内学会と国際会議での発表、日本語と英語の両方での論文と著書の執筆・公表に取り組んでいく。 まず、「理論レベル」では、学校学習の根本的な矛盾を、学校学習の「カプセル化」ととらえ、「学校学習の脱カプセル化はどのようにして可能なのか?」をリサーチクエスチョンとして、「子どもが問いを生み出す」探究学習を中心に、「拡張する学校」のモデル化をさらに進展させていく。 次に、「方法論レベル」では、昨年度、東京の成城学園初等学校において教師たちと行った、文化・歴史的活動理論と拡張的学習理論にもとづく「チェンジラボラトリー」を方法とした形成的介入の全10回のセッションのデータを緻密かつ体系的に分析していき、教師たちの拡張的学習を促進・支援していく協働の介入について、方法論的な解明を進める。 さらに、「実践レベル」では、第1に、成城学園初等学校でのチェンジラボラトリーで得られたデータを理論的モデルと相互作用させて、「拡張する学校」のモデルを具現化する典型的事例を創造していく。第2に、新たに、兵庫県立西宮今津高等学校での総合的な探究の時間において、高校生たちのチェンジラボラトリーをそれぞれ7回実施し、データを収集する。また、保育者のチェンジラボラトリーも本年度、新たに実施し、そのデータを収集する。 こうしたチェンジラボラトリーを用いた形成的介入研究を今後さらに発展させるために、本研究の海外共同研究者である、ヘルシンキ大学活動・発達・学習研究センター・センター長のユーリア・エンゲストローム名誉教授とタンペレ大学のアナリサ・サニーノ教授とのオンライン会議を開催する。また、両教授を日本に招聘し、本研究に関する国際シンポジウムと国際セミナーを開催する。
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