研究課題/領域番号 |
22H00144
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
石川 明正 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (40452833)
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研究分担者 |
古賀 太一朗 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (10834468)
周 啓東 名古屋大学, 高等研究院(素粒子), 特任助教 (50833191)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2023年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
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キーワード | レプトン普遍性 / B中間子タウオニック崩壊 / 高速軽量ピクセル検出器 / 低消費電力アンプ / 飛跡トリガー / 素粒子実験 / レプトクォーク / 半導体検出器 / SOIピクセル検出器 / 対称性の破れ / 荷電ヒッグス粒子 / 新物理探索 / タウレプトン / B中間子レプトニック崩壊 / B中間子セミレプトニックタグ / B中間子ハドロニックタグ / Belle II 実験 / 大統一理論 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、素粒子実験において素粒子標準理論のほころびが見え始めている可能性がある。標準理論ではレプトンの種類によらず性質は同じというレプトン普遍性が成り立つ。しかし、クォークを含むB中間子の二つの崩壊B→D(*)τνと B→K(*)μμでレプトン普遍性が破れている可能性があるという結果が複数の実験から発表された。もし、これが本当であれば素粒子物理の一大革命が起こり、新たな素粒子理論を打ち立てる最初の結果となり得る。本研究ではBelle II 実験でB中間子崩壊でのレプトン普遍性を検証する事と、レプトン普遍性の検証を加速するSOI技術を用いた高速軽量半導体ピクセル崩壊点センサーの開発を行う事である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は2つあり、一つは Belle II 実験において、B中間子崩壊におけるレプトン普遍性の検証を行うこと、もう一つはレプトン普遍性の検証を向上させる高速軽量ピクセル検出器を開発することである
B中間子崩壊でのレプトン普遍性の研究においては3つの解析を行った。B→D(*)τν 崩壊においては多変量解析を用いた背景事象の削減、背景事象の分布の決定、シグナルの抽出方法の検証を行った。また、 B→D(*)τνでのレプトン普遍性の解析で分母となる B→D(*)lν(l=e or μ)の解析を行い、国際会議で発表を行った。セミインクルーシブ手法を用いたB→Xsμμの解析に関しては、Xsの娘粒子が多い時の背景事象削減をするための背景事象削減方法の研究を行った。セミレプトニックタグを用いたB→τν 崩壊に関しては、この研究課題に新たに追加した解析である。この崩壊はレプトン普遍性および荷電ヒッグス粒子に感度がある崩壊であり、重要な崩壊モードである。まずはシグナルの再構成を始めた。
ピクセル検出器の開発においては、DuTiP1 の放射線源を用いた検出効率の測定を行った。回路のバイアスを最適化することにより (98±2)%の検出効率を得た。この誤差が大きいのはエネルギーの低い放射線源からのβ線を用いていることにより、セットアップに制限がかかることが原因である。ピクセル上のデジタル回路においては、テストパルスを用いて時間分解能の評価を行った。11ns程度の時間分解能を得た事から63nsのデジタル回路のパルス幅には十分収まる事がわかった。しかし、ピクセル後とのばらつきが大きい事も判明したので、その対策を考えている。DuTiP2においては読み出しボードの設計と開発を行い、性能評価を行う準備は整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物理解析においては予定通り進んでおり、さらに新たな崩壊モードを追加したことから、当初の計画通りに進んでいると言える。 ピクセル検出器については DuTiP1 の検出効率が十分高い事を示し、デジタル回路の時間分解能も予測通りの結果が出たことに関しては順調に進んでいる。しかし、DuTiP2の検証に着いてはやや遅れている。
以上を総合的に判断し、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
B→D(*)τν 崩壊においてはモンテカルロシミュレーションによる解析を終わらせ、データを用いた解析に移り、結果を論文にまとめる。B→Xsμμの解析に関しては、ミューオン識別効率が Belle II 実験では低いことが判明した。これは検出器自身と言うよりはソフトウェアの改善が必要なことによる。機械学習を用いたミューオン識別ソフトウェアの開発を行い、感度向上を目指す。B→τν 崩壊に関しては、シグナルの再構成と背景事象の削減を行い、モンテカルロシミュレーションでの最適化を行う。その後、データとシミュレーションの違いを見積もる。
ピクセル検出器の開発においては、DuTiP1 の量子ビームを用いた測定を行い、誤差の小さい見積もりを行う。また、DuTiP2の読み出しファームウェアの開発を行う。アナログ回路に関しては、テストパルス回路が大きな寄生容量を持つことから、テストパルスに反応しない問題に対して様々なシミュレーションを行う。そして改善点がみつかりしだい、小型のテスト用チップに実装するために設計を見直しを行い、設計・製作を行う。
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