研究課題/領域番号 |
22H04406
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研究種目 |
奨励研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
3240:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 網走刑務所 |
研究代表者 |
富田 拓 網走刑務所, 網走刑務所医務課医師
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
480千円 (直接経費: 480千円)
2022年度: 480千円 (直接経費: 480千円)
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キーワード | 注意欠如多動症(ADHD) / 受刑者 / 刑務所 / 有病率 / 再犯防止 / 発達障害 / 治療パッケージ / ADHD / 再犯予防 |
研究開始時の研究の概要 |
発達障害、特に注意欠如多動症(ADHD)と犯罪・非行との関連、及び薬物療法を行うことによる犯罪率の低下が明らかになってきている。日本でもADHDを持つ非行少年に対する治療的働きかけは行われているが、成人犯罪者に関しては、ADHDを持つ者の割合も未だ把握されておらず、刑務所においても治療はほとんど行われていない。そこで、本研究では、受刑者に対してADHDに関する予備的検査を行い、陽性者に診察を行うことで、受刑者中のADHDを持つ者の割合を明らかにする。その上で希望者に対して薬物療法を中心とする治療的働きかけを行い、有効性を検討することでADHDを持つ犯罪者の再犯予防に資することを目的とする。
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研究成果の概要 |
ADHD(注意欠如多動症)のスクリーニングテスト(疾病の有無を選別する検査)であるASRS-Ver1.1を用いて、刑務所受刑者807名中の陽性者の割合が11.6%に上ることを明らかにした。また、陽性者に対する確定診断等によって受刑者中の有病率を推定し、最低でも8.68%という結果を得た。これらは一般人口中のADHDを持つ人の割合のそれぞれ約4倍、3倍に当たる。これらの受刑者のほとんどが、これまで未診断・未治療であった。診断確定者に対し犯罪とADHDの関連について心理教育を行ったところ、3人に1人以上が服薬を希望し、76.5%が治療有効であった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
信頼しうる対象者数を用いて受刑者中のADHDスクリーニング陽性率および推定有病率を明らかにしたのは日本では初めてであろう。また、受刑者の治療意欲が決して低くないこと、受刑者に対する薬物治療の有効性が十分高いことも明らかになった。海外の複数の文献において、ADHDを持つ一般人に薬物療法を行うことで、犯罪率が30-40%低下することが明らかになっていることから、はるかに有病率の高い刑務所においてADHDを持つ人を発見し、希望者に治療を行うことで、ターゲットが明確でかつ非常に効果的な再犯防止となる可能性が示された。
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