研究課題/領域番号 |
22H04971
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 和也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50334313)
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研究分担者 |
鈴木 康介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40595667)
谷田部 孝文 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60875532)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
195,910千円 (直接経費: 150,700千円、間接経費: 45,210千円)
2024年度: 26,390千円 (直接経費: 20,300千円、間接経費: 6,090千円)
2023年度: 43,810千円 (直接経費: 33,700千円、間接経費: 10,110千円)
2022年度: 73,970千円 (直接経費: 56,900千円、間接経費: 17,070千円)
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キーワード | 単核メタレート / 金属多核活性点構造の精密設計 / 小分子が関わる高難度反応開発 / ポリオキソメタレート / 担持触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
酸素、水素、水、アンモニア、二酸化炭素等の小分子を利用した高効率な化学合成や、エネルギー変換・貯蔵・輸送技術の開発は極めて重要で、社会実装の観点からは耐久性の優れる無機触媒材料の開発が望ましい。本研究では、単核メタレート(単核金属種)からの酸化物分子触媒設計・金属ナノ粒子/クラスター設計技術を基盤とし、金属種・金属数・配列・構造・サイズ等の秩序性を有する金属多核活性点構造設計の方法論を確立し、汎用化させる。上記のような小分子が関わる高難度反応をターゲットとして設定し、これらを実現するための真に力量のある無機触媒材料を設計し、実用レベルの触媒反応系の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本提案では、酸化物分子触媒設計・金属ナノ粒子/クラスター設計技術を基盤とした触媒設計を行い、酸素、水素、水、アンモニア、二酸化炭素等の小分子が関わる高難度反応を実現することを目的として研究をおこなってきた。当該年度は、特に合金を含む金属ナノ粒子系触媒設計および反応開発に注力した。 担持Auナノ粒子触媒(+Zn助触媒)、酸素を酸化剤として用いることで、これまでの第三級アミンの酸化的α-C-H 結合官能基化の位置選択性とは全く異なるα-メチレン基特異的な第三級アミンのアルキニル化反応を世界で初めて達成した。詳細な対照実験や速度論解析から、Auナノ粒子触媒上において第三級アミンから酸素分子への協奏的な二電子一プロトン移動が起こりイミニウムカチオンを形成するというこれまでにない第三級アミン酸化反応機構を明らかにした。本反応は様々な第三級アミンに適用可能であり、今後さらなる反応系の拡張が大いに期待できる。そのため、現在基質適用性の拡張やアルキン以外の他の求核剤の応用等について詳細な検討を行っている。 また、CeO2担持Au-Pd合金ナノ粒子触媒を用いて1,2-ジケトンの酸化的付加を経る脱カルボニル反応の開発にも成功した。1,2-ジケトンの酸化的付加を伴う脱カルボニル反応の既報は基質適用性が限られており、ジアリール1,2-ジケトンをジアリールケトンへと変換する反応は、量論反応を含めてもこれまで未報告であり、本研究が初の例となる。 本触媒系は、ベンゾインやジオールを出発物質として脱水素・脱カルボニルによるタンデム反応でのジアリールケトン合成にも適用可能であった。 上記ナノ粒子研究以外にも、ポリオキソメタレートをリガンドとしたナノ粒子触媒やポリオキソメタレート構造を保持したまま担体に固定化するための新しい手法の開発も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本提案では、酸化物分子触媒設計・金属ナノ粒子/クラスター設計技術を基盤とした触媒設計を行い、酸素、水素、水、アンモニア、二酸化炭素等の小分子が関わる高難度反応を実現することを目的として研究をおこなってきた。当該年度は、特に合金を含む金属ナノ粒子系触媒設計および反応開発に注力した。その結果、担持Auナノ粒子触媒による第三級アミンの酸化的α-C-H 結合官能基化反応、CeO2担持Au-Pd合金ナノ粒子触媒による1,2-ジケトンの酸化的付加を経る脱カルボニル反応の開発、といった新しい反応の開発に成功した。これらの反応は独自の極微構造触媒ならびに固体表面の精密設計・機能集積化によって初めて実現した固体触媒ならではの反応であり、新規性・独創性が極めて高い。また、本研究で得られた知見は、固体触媒分野の新たな学理を提供するものであり、学術的にも極めて意義の大きいものであると確信している。 上記以外にも担持Pdナノ粒子触媒の精密設計を基盤としたアクセプターレス脱水素芳香環形成反応によるアニリン合成などの開発にも成功している(2023年度成果として論文アクセプト済み)。新しい発見や学理も見いだせたので、おおむね順調に進捗し たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要や現在までの進捗状況で記述した知見(触媒調製法、設計指針、反応機構等)を利用して、小分子が関わる高難度反応につなげる。開発した反応に対する反応機構を、触媒の詳細なキャラクタリゼーション、計算化学的アプローチにより解明する。そこで得られた知見も生かして反応開発を行っていきたい。 例えば反応開発については、水を酸素源(求核剤)とした第三級・第二級アミンのアクセプターレス酸素化反応を検討する。適切な担体上に担持したAu-Pdシングルアトム合金を中心として検討し、 有用化合物(アミド)と共に水素が生成するような水酸化反応の開発にチャレンジする。水以外の求核剤の検討、脱水素反応への展開についても検討する。これ以外にも、担持Niサブナノクラスター触媒を中心として、ナフトールやフェノールのC-O結合開裂を開発する。また、PdやNiナノ粒子を機能性担体機能性担体に担持した触媒を設計し、超高効率脱水素芳香環形成を目指す。例えば、シクロヘキサノール脱水素芳香環形成と工業化されているベンゼンの部分水素化/水和によるシクロヘキサノール製造を組み合わせると、形式的にベンゼンと水からフェノールと水素を合成する夢のプロセスが実現できる。そのための基礎的知見を集める。また、脱水素芳香環形成を、直接アンモニアを導入しながらおこなうことでアニリンの選択的合成を目指す。 また、欠損型ポリオキソメタレートを分子鋳型として、金属種・金属数・配列・構造・サイズ等が精密制御された金属多核活性点構造の精密設計についてもその手法や学理を深化させていきたい。
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