研究課題/領域番号 |
22K06728
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
幅野 渉 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (50332979)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 核内受容体 / DNAメチル化 / ストレス応答 |
研究開始時の研究の概要 |
生体が環境変化のストレスにさらされたとき、細胞は適切な遺伝子の発現を誘導または減弱させストレスに応答する。このときストレスを感知するセンサーと遺伝子発現を誘導する転写因子の2役を演じるのが核内受容体AhRである。本研究では、AhRを介したストレス応答がDNAのメチル化修飾により柔軟に制御される可能性を探索する。本研究の実験手法は、生物がストレスに適応するメカニズムを解析するモデルとして応用が期待できる。
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研究実績の概要 |
細胞が環境変化のストレスにさらされたとき、核内受容体aryl hydrocarbon receptor(AhR)はストレスをリガンドとして感知するセンサーと、必要な応答を誘導する転写因子の2役を担う。前研究課題では、AhRが転写因子として非メチル化状態の標的遺伝子(CYP1B1)に選択的に結合することを証明してきた。そこで本研究課題では、細胞がDNAメチル化修飾を利用してAhRを介したストレス応答を変動させる可能性を探索する。 研究期間の開始となる令和4年度は、5-aza-2’-deoxycytidine(DAC)の処理でDNA脱メチル化を誘導したヒト肝臓がんHepG2およびHuH7細胞において、AhRのリガンド(β-naphthoflavone、βNF)の曝露によりCYP2あるいはCYP3遺伝子の発現誘導が起こるのかを検証した。これらのCYP遺伝子はCYP1遺伝子とは異なり、βNFの曝露によりAhRを介した発現の誘導は起こらないことが知られている。その結果、AhRの標的XRE配列を完全に非メチル化の状態とした場合でも、発現の誘導が検出されることはなかった。これより、AhRを介した遺伝子発現誘導はXRE配列を有するだけでは起こらず、よりダイナミックなクロマチンレベルの制御機構が関わる可能性が示唆された。 令和5年度は、4種の大腸がん細胞(LoVo、LS180、DLD-1、HCT116)に、βNF、DACまたはDACとβNFの併用の各薬剤処理を行い、各細胞からRNAを抽出した。これらのRNAを対象に遺伝子発現の網羅解析を行った(Rhelixa社による受託解析)。このデータをもとに、βNF による遺伝子発現誘導がDAC曝露(DNA脱メチル化)によって増強される複数種類の遺伝子を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4種の大腸がん細胞を対象に、AhRを介した発現の応答性がDNAメチル化状態により変動する複数の遺伝子の候補を見出すことができた。次年度は各遺伝子について詳細な検証を行う。当初の研究計画よりも少し遅れているが、着実に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に選出した候補遺伝子について、定量的PCRを用いて正確な発現量の変動を確認する。さらに各遺伝子において標的XRE配列を検索し、その周辺配列のメチル化解析を行う。両者の結果をすり合わせることで、DNAメチル化状態によってAhRによる応答性が制御される遺伝子を同定する。同定された遺伝子の生物学的機能を考慮することで、ストレス応答への意義を模索する。
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