研究課題/領域番号 |
22K08917
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉本 昌之 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (00447814)
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研究分担者 |
児玉 章朗 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (10528748)
竹原 康雄 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (70188217)
坂野 比呂志 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (80584721)
川井 陽平 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (80802347)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 腹部大動脈瘤 / ステントグラフト / エンドリーク / 4D-flow MR |
研究開始時の研究の概要 |
腹部大動脈ステントグラフト留置術(EVAR)後の「type 2 endoleak」( T2EL)は高頻度の合併症であるが治療方針のエビデンスは乏しい。4D-flow MRは血行動態という「動的」要因を非侵襲的に評価可能である。本研究はEVAR患者を対象とし、1)4D-flow MRでT2ELによる瘤内圧変化や血液流入といった「動的」因子を定量化するとともに、2)EVAR後の中~長期成績(瘤径、T2EL、再治療)を観察する。データ解析によってT2ELの病態解明とT2EL治療の最適化と長期予後改善を目指す。
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研究実績の概要 |
腹部大動脈瘤(以下, AAA)に対するステントグラフト留置術(以下、EVAR)の登場から15年が経過し、endoleakへの適切な対処が長期成績改善に必要な臨床的課題であることが明らかになった。就中、瘤の分枝から瘤内への血液逆流による「type 2 endoleak」(以下, T2EL)は最も高頻度にみられるEVAR関連合併症であるにも関わらず、治療方針の根拠となるエビデンスは極めて乏しい。従来の造影CT画像による「静的」要因の評価による諸家の研究では、T2ELに関わる臨床上の問題への回答は得られていない。3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴画像法(以下, 4D-flow MR)は従来からのMRI検査とは異なり、血行動態という「動的」要因を非侵襲的に生体内で評価可能な画像検査手法である。 これまでに我々は3Dワークステーションによる造影CT画像解析の研究により、大動脈瘤の立体的解析の臨床的有用性を示し(Eur Heart J 2014)、この上で、ステントグラフト留置前の大動脈瘤の形態、留置後の瘤内血栓化、endoleak残存といった要因がステントグラフト関連合併症発生の有意な危険因子であることを見出し、報告を行ってきた(Surg Today 2016; Ann Vasc Surg 2018, 2020, 2021; J Vasc Surg 2021)。本研究は、これらの「静的」データに基づく研究の発展・延長上に位置するものであるが、4D-flow MRによる血行力学的データの蓄積・解析を追加することで従来の形態学的データのみでは果たし得なかった、T2ELの病態の理解と治療方針の策定につながるbreak-throughを最終的な目標とし、研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はEVAR後の患者を対象とし、1)従来からの造影CT画像に加えて、4D-flow MRにてT2ELによる瘤内圧の変化や血液の流入量といった「動的」因子を測定・定量化するとともに、2)EVAR後の動脈瘤フォロー中の臨床成績(瘤縮小、T2ELの自然消退/新規発生、再治療の必要性/有効性)を観察するProspective studyである。 1)に関して、まずは40症例以上の症例の組み入れを目標としているが、主には4D-flow MR検査の物理的制限(検査可能な時間や検査枠の問題)の為に目標となる症例数に未だ到達していない。しかしながら、新型コロナなどによる入院・検査の制限も緩和に向かっており、今後、症例組み入れは加速するものと期待している。2)に関しては、対象となった患者のデータ収集とデータベース構築が問題なく進行している。 一方で、少数症例のEVAR前後の4D-flow MRのデータ解析からEVAR後に有意にenergy lossが増大する結果が得られ、これを研究分担者である竹原康雄らが論文化した(Horiguchi R, et al. J Magn Reson Imaging. 2023;57:1199-1211)。また、T2ELが持続している症例における瘤径拡大/縮小の要因についての解析も平行して進めており、学会発表(国際学会含む)および2編の論文化をした(Sugimoto M, et al. J Endovasc Ther. 2022)(Sugimoto M, et al. J Endovasc Ther. 2023)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究への対象患者組み入れを加速し、4D-flow MR撮影による計測データ・臨床データのデータベース構築/更新作業を今後も続行していく。構築した症例データベースについて、各種パラメーター(形態学的特徴、臨床データ、併存疾患、術前・術後合併症(グラフト関連合併症を含む)、使用されたステントグラフト・デバイス)を統計学的に解析するとともに、4D-flow MRにより測定された血行力学的データとの関連を検討する。 術前・術後の血行力学的データと中ー長期臨床成績(とくにT2EL)との関連について統計学的解析を進め、予後不良なT2ELの予測・鑑別を可能とする統計学的予測モデルの構築を目指す。これらの結果と我々がこれまでに蓄積した知見を総合し、最終的にはT2ELに対する治療戦略の最適解を明らかにし、世界初の治療ガイドラインを提唱することを目指す。
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