研究課題/領域番号 |
22K09670
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
山本 圭佑 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50738515)
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研究分担者 |
一宮 慎吾 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30305221)
高野 賢一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70404689)
亀倉 隆太 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70404697)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | T 細胞疲弊 / アレルゲン免疫療法 |
研究開始時の研究の概要 |
アレルゲン免疫療法(allergen immunotherapy, AIT) は根治が期待できる唯一のアレルギー性鼻炎の治療法である。しかし、無効例が存在することや治療効果を予測するバイオマーカーが確立していない問題点がある。これまでの舌下免疫療法施行例の検討で、特定のCD4T 細胞サブセットの免疫疲弊(exhaustion) が AIT の新たな免疫学的メカニズムとして重要な役割を担っていると仮説を立てた。免疫療法に伴い増加する疲弊CD4 T 細胞の機能を明らかにすることで、AIT の免疫学的メカニズムの全容解明と治療効果を予測するバイオマーカーの発見に繋げたい。
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研究実績の概要 |
アレルゲン免疫療法(allergen immunotherapy, AIT) は根治が期待できる唯一のアレルギー性鼻炎の治療法である。しかし、無効例が存在することや治療効果を予測するバイオマーカーが確立していない問題点がある。AIT の更なる普及のためには、奏効率の向上とバイオマーカーの発見が喫緊の課題である。われわれはこれまでの舌下免疫療法施行例の検討で、特定の CD4 T 細胞サブセットの免疫疲弊(exhaustion) が AIT の新たな免疫学的メカニズムとして重要な役割を担っていると仮説を立てた。T細胞疲弊とはT 細胞の機能低下状態であり、慢性感染症やがんにおいて T 細胞受容体を介する抗原特異的シグナルの持続および不安定な共刺激・共抑制シグナル(CD28 や PD-1 など)が引き起こす。自己免疫疾患やアレルギー疾患に対して、 T 細胞疲弊が治療標的となる可能性がある。 免疫療法に伴い増加する疲弊 CD 4 T 細胞の機能を明らかにすることで、AIT の免疫学的メカニズムの全容解明と治療効果を予測するバイオマーカーの発見に繋げたい。本研究では、T 細胞疲弊の観点からAIT の免疫学的メカニズム、特殊な機能をもったアレルギー関連細胞としてのTfh2 細胞によるアレルギー性鼻炎の病態を明らかにし、新規治療法の開発や免疫疲弊を人為的に制御する新たなモダリティの開発に繋げることを目的としている。すなわち、AIT によりCD4 陽性T 細胞サブセット、特にTfh2 細胞に疲弊現象が起きているのか? 治療によりどのようなTfh2 細胞の機能変容が起きて治療効果に結びついているのか? T細胞疲弊の誘導がアレルゲン免疫療法の奏効率の上昇に繋がるのか?を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はAIT開始後24か月目の症例を追加して検討することができ、予備実験で得られていたAIT 開始後 24 か月目において開始前と比較して PD-1 陽性 Tfh2 細胞が増加するという結果の統計学的有意性を確認することができ、さらに、AIT 開始後 24 か月目において開始前と比較してKi-67陽性Tfh細胞とIL-4陽性Tfh細胞が減少するという、Tfh細胞疲弊を示唆する本研究課題の目的を達成する上で重要な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はAIT 患者の治療前と治療開始後24か月以降 (30, 36 か月目) の長期症例が追加される予定であり、症例数を増やして検討を進めていく予定である。Tfh2 細胞 (CD3+CD4+CXCR5+CD45RA-CCR6-CXCR3-) の疲弊分子 (PD-1, Tim-3, TIGIT, CD39 など) や細胞増殖能のマーカーである Ki-67、アレルギーの病態に関与の強い IL-4 や IFN-といったサイトカインの免疫染色を行い、フローサイトメトリーで各陽性細胞の割合について治療開始前後の比較検討を行う。さらに、治療前と長期 AIT 治療後(24 か月目以降)の Tfh2 細胞の表現型の解析のために、セルソーターで単離した Tfh2 細胞(または Tfh 細胞)のTfh 細胞関連遺伝子 (BCL6, IL-21, IL-4 など)の比較検討を行う。また機能解析として、セルソーターで単離した Tfh2 細胞(または Tfh 細胞)と B 細胞との共培養の系で IgE 産生を AIT 治療前と治療開始後で比較検討し、疲弊 Tfh2 細胞の機能的役割を明らかにしていく予定である。さらに、長期 AIT 治療群(24か月目以降)をヨーロッパアレルギー学会の症状薬物スコア (combined symptom and medication scores: CSMSs) を用いて治療効果良好群 (responder) と 不良群 (non-responder) に分類し、2 群間での治療開始前、長期 AIT 治療後(24か月目以降)それぞれの Tfh2 細胞(または Tfh 細胞)の遺伝子発現プロファイル(遺伝子シグネチャー)についてトランスクリプトーム解析または具体的な遺伝子については real-time PCR 等で比較検討を行う。特に疲弊遺伝子シグネチャーについて responder と non-responder での違いを明らかにし、治療効果の予測に繋がる遺伝子の発見に繋げたい。候補遺伝子が発見された場合には、フローサイトメトリー や ELISA 等の手法で蛋白レベルでのバリデーションを行う予定である。
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