研究課題
若手研究
銅酸化物における高温超伝導の発見以降、その超伝導発現機構解明のため膨大な研究がなされてきた。超伝導相は反強磁性モット絶縁体相に近接することから、磁気揺らぎ媒介の超伝導機構が最有力候補の一つである。一方近年の共鳴X線散乱の実験から、CuO2面内における電荷密度に周期性が現れること、また3次元的な分散関係を持つ電荷の集団励起モードが存在することが明らかとなった。本研究では高分解能共鳴非弾性X線散乱により超伝導秩序と電荷秩序・集団励起を統一的に観測し、電荷揺らぎの高温超伝導への役割を解明する。
超伝導は低温で金属の電気抵抗がゼロになる現象である。銅酸化物高温超伝導の発見以降、様々な遷移金属化合物における超伝導が発見されてきた。銅酸化物は結晶格子の振動を媒介とする従来型の超伝導機構では説明できず、電子の電荷密度や磁気モーメントの振動を媒介とする非従来型の機構が有力候補とされている。本研究ではX線を用いた新しい分光法である共鳴非弾性X線散乱を用いて、電荷の振動モードの振る舞いを解明することを目的とした。銅酸化物のうち最も高い転移温度を示す物質群の電荷の振動モードは、長距離の電子間クーロン相互作用を考えることで初めて説明できることがわかった。
本研究の結果、銅酸化物において電荷密度の集団的な振動が普遍的に存在し、かつその振る舞いが超伝導の発現するCuO2層の数に強く依存することが明らかとなった。この結果は3枚のCuO2層を含む銅酸化物において超伝導転移温度が最高になる理由を解明する可能性がある。また、鉄系やニッケル酸化物における非従来型超伝導一般においても同様の電荷の振動モードの存在が期待され、広く非従来型超伝導機構における電荷自由度の重要性を示唆するものである。本研究で確立した散乱角度を連続的に変化させる共鳴非弾性X線散乱手法は、NanoTerasuにおける超高分解能RIXS測定において幅広い量子物質に対して適用可能である。
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すべて 国際共同研究 (12件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 6件、 招待講演 9件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Nature Communications
巻: 14 号: 1 ページ: 563-567
10.1038/s41467-023-42804-3
Journal of the Physical Society of Japan
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