研究課題/領域番号 |
22K13996
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石川 孟 東京大学, 物性研究所, 助教 (70843192)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | カゴメ格子 / 磁気抵抗測定 / 新物質開発 / バンド構造 / カゴメ金属 / 磁気輸送測定 / 結晶育成 |
研究開始時の研究の概要 |
固体中の電子の動きは電子のバンド構造を強く反映する。多くの物質が放物線状のバンドを有するのに対し、カゴメ格子とよばれる二次元格子に原子が並ぶと、線形なバンドや平坦なバンドが現れ、磁場に対して一般的な金属とは大きく異なる応答を示すと期待されている。本研究は、新物質開発とバンド構造を強く反映する強い磁場領域までの磁気輸送特性の測定から、カゴメ格子をもつ金属に特有な輸送特性を開拓する。
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研究実績の概要 |
カゴメ格子とよばれる三角形からなる二次元格子を有する金属では、物質中の電子の動きを支配するバンド構造に特徴的な分散関係が現れることが知られている。特に、Dirac点とよばれる直線的なバンドが交差する点や、Van Hove特異点とよばれる特徴的な分散をもつバンドが電気伝導を担う場合には、大きな磁気抵抗や非従来型の超伝導といった特異な電気伝導特性を示すことが期待され、盛んに物質開発が行われている。 本研究では、カゴメ格子に特徴的なバンド構造が現れると考えられる金属間化合物の単結晶を育成し、バンド構造の性質をよく反映する強い磁場領域までの磁気抵抗測定を行うことで、特異なバンド構造をもつ物質に固有な磁気輸送特性を見出すことを目標とした。 対象物質として、166型構造とよばれる3d遷移金属がカゴメ格子を形成する物質に着目した。バナジウムと鉄のカゴメ格子を有する物質に着目して試料合成を行い、単結晶試料を得ることに成功した。パルス強磁場を用いた実験を行ったところ、鉄のカゴメ格子を有する物質において磁場誘起相転移の存在を見出した。来年度は磁場誘起相転移前後の輸送特性を重点的に調べる予定である。 さらに、カゴメ格子と類似するバンド構造が現れることが知られているハニカム格子を有する物質にも研究対象を拡げ、物質開発を行った。その結果、5d遷移金属のハニカム格子を有する層状物質において超伝導を観測した。今後、カゴメ格子をもつ物質と並行して、ハニカム格子超伝導体についてもパルス強磁場中での磁気抵抗測定を進めてゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた3d遷移金属であるバナジウムと鉄のカゴメ格子を有する166型金属間化合物の単結晶育成に成功した。特に、鉄のカゴメ格子を有する物質に関してはパルス強磁場中で磁場誘起相転移を発見した。今後、この物質の磁場誘起相転移前後における磁気抵抗の変化に着目した輸送測定を行っていく。バナジウムのカゴメ格子をもつ物質に関しては、試料の電気抵抗が非常に小さく、パルス磁場中での測定が困難であることが分かった。そこで、試料の微細加工を試みたが、加工中に試料が割れてしまうことが分かり、詳細な磁気抵抗の測定には至っていない。 カゴメ格子と類似のバンド分散がハニカム格子においても現れることに着目し、遷移金属がハニカム格子を形成する化合物に研究対象を拡げた。その結果、新超伝導体を発見することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、磁場誘起相転移の存在が明らかになった鉄のカゴメ格子をもつ物質の輸送特性をパルス強磁場中で測定する。磁場誘起相転移に伴って輸送特性がどのように変化するかを明らかにする。バンド計算を行い、実験結果と併せて磁気輸送特性の変化を解釈する。 ハニカム格子新超伝導体に関しては、予備実験において比較的強い磁場中においても超伝導が生き残ることが明らかとなった。今後、パルス強磁場領域での磁気抵抗測定を実施し、上部臨界磁場と温度磁場相図を明らかにする。バンド計算を行い、この物質のバンド構造と既知のカゴメ格子超伝導体との類似点や相違点を明らかにする。 本年度が研究の最終年度であるため、カゴメ格子金属、および、ハニカム格子超伝導体に関して得られた成果を論文としてまとめる。また、日本物理学会等の学会や研究会において積極的に発表を行う。
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