研究課題/領域番号 |
22K14017
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
多羅間 充輔 九州大学, 理学研究院, 助教 (90756834)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | アクティブマター / 細胞骨格 / 細胞運動 / 自己組織化 / 協同現象 / フォースフリー |
研究開始時の研究の概要 |
アクチン繊維はミオシン分子モーターなどとともに細胞内において様々な高次構造を形成し、細胞の力学機能を実現する。このような複合系アクティブソフトマターである細胞骨格系の構造の自己組織化とその力学機能の原理を粗視化分子動力学モデルを用いて探求する。一方、細胞骨格に駆動される細胞も互いに協調して集団で様々なパターンを形成し、器官形成などを実現する。細胞集団のダイナミクスと同時に実現される構造の自己組織化メカニズムをアクティブマター物理学の視点から理論的に解明する。
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研究実績の概要 |
アクティブマターはその運動能ゆえにさまざまなパターンを形成し、その自己組織化構造は高次機能の発現プラットフォームとなる。アクティブマターの具体例は、多くの場合精確な制御が可能となる非平衡条件下に置かれたコロイド粒子や液滴などを用いて実現した物理的、化学的、または工学的な人工系の他に、制御の点では劣るものの神秘的であり多くの研究者を魅了してやまない数多の生命現象に見出される。自己組織化構造の機能発現は生命現象において重要な役割を担う。ミクロな生体分子である細胞骨格は細胞スケールの高次構造を自己組織化し、力学機能を発現する。 また、細胞は、自身を構成するこれらの細胞骨格構造の力学機能を制御することで、マクロな運動を実現する。さらに、細胞間で運動や細胞骨格構造が協調し、より大きなスケールの生体組織の発生が正確に行われるなど、複雑な生命機能が発現する。 本研究では、特に次のふたつのアプローチにより、アクティブマター物理学の視点から、生命現象の背後に潜む普遍原理と、細胞骨格ー細胞ー生体組織のスケールを縦断する生体ダイナミクスの階層構造を探求する。本年度は各の項目について、それぞれこれまでの研究成果を論文にまとめ、学術雑誌に発表することができた。項目1:細胞骨格が自己組織化する高次構造の形成原理とその力学機能発現メカニズムを解明する。項目2:細胞が互いと相互作用しながら集団で運動するときに形成する動的構造の発現原理を、細胞の力学モデルを発展させて明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、次の2つの研究について研究成果をまとめ、論文として学術雑誌に発表することができた。一つは、ミオシンモーターに起動されたアクチン細胞骨格の細胞膜付近への集積とその力生成に関する研究についてである。もう一つの研究では、基盤上の細胞の運動を、フォースフリー(力の総和がゼロ)の条件を満たす細胞の力学モデルと細胞内部の生化学反応が自己組織化する濃度分布の伝搬波とを結合することにより実現し、細胞が運動するときに基盤に与える牽引力の分布について実験結果を再現することに成功した。 これらの他に、以下の研究を進めることができた。①細胞骨格の自己組織化:実験で観測されたアクチン細胞骨格が形成するナノメートルスケールの構造について理論モデルを用いてその自己組織化原理と構造転移について研究を進めた。②細胞集団の協同運動:細胞集団が集団で運動するときに形成する構造について理論モデルにより構造を再現し、その自己組織化メカニズムについての解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の方針で研究を進める計画である。 研究項目1:細胞骨格が自己組織化する構造の形成過程についてさらに研究を進め、動的高次構造がどのように実現するのかをメソスケールモデルを用いて解析する。 研究項目2:細胞集団が協調して運動するときの、各々の細胞の運動サイクルに着目して、内部構造と集団運動とがどのように連携して動的秩序構造が自己組織化するのかを解析する。
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