研究課題/領域番号 |
22K14555
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
仁王頭 明伸 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (60910320)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 自己組織化単分子膜 / 電荷移動 |
研究開始時の研究の概要 |
分子1個に電子素子の役割を持たせようとする単分子素子は、究極の微小デバイスとして注目されている。本研究では、単分子の導電特性を非接触に評価する手法として、共鳴オージェ電子分光法による方法を提案する。この手法では、軟X線による内殻電子励起に伴って起こる分子内の高速電子移動を、放出オージェ電子の計測により観測することが可能である。この電子移動速度の計測により、単分子の導電性評価が可能であることを実証する。具体的にはこの計測手法を、π電子共役系に適用する。2つのベンゼン環の間のねじれ角を系統的に変えたビフェニル分子について分子中の電子移動速度を計測し、分子の立体構造とその導電性の関係を明らかにする。
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研究実績の概要 |
軟X線による内殻電子励起を用いることで、分子の特定の原子に局所的に電荷を発生させることができる。基板表面に吸着した分子の場合、生じた電荷は分子鎖を介して基板へと移動するが、この電荷移動は放出される共鳴オージェ電子のエネルギー変化として観測できる(core-hole clock法)。本研究ではこのような軟X線による反応ダイナミクスを用いることで、π共役分子の導電性の非接触評価を試みた。対象のπ共役分子として2つのベンゼン環からなるビフェニル分子および3環構造を持つフルオレン分子に着目した。 令和4年度はまず分子が基板上に吸着した自己組織化単分子膜(SAM)試料の作製および評価を行った。メチル基を導入することによりねじれ角が変化した3種類のビフェニルチオール分子試薬(HS-C6H4-C6H4-COOCH3, HS-C6H4-C6H3Me-COOCH3, HS-C6H4-C6H2Me2-COOCH3)およびフルオレンチオール分子試薬(HS-C13H8-COOCH3)を用いて、金基板上にSAM試料の作製を試みた。作製したSAM試料の評価を、HiSOR BL13を利用した軟X線吸収分光計測により行った。得られた吸収スペクトルから、いずれのSAM試料においても基板上に配向膜が形成されたことが確認された。その後、作製したそれぞれのSAM試料について軟X線光電子分光計測を実施し、共鳴オージェ電子スペクトルの取得に成功した。得られた共鳴オージェスペクトルの解析から、分子-基板間の電荷移動時間の評価を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和4年度には、当初予定していたSAM試料の作製およびその評価を行い、電荷移動ダイナミクスの観測に適した高配向のSAM試料の作製方法を確立した。そこで当初令和5年度以降に予定していた共鳴オージェ電子分光測定を前倒しして進め、令和4年度中にその測定の大部分が完了した。このように本研究課題は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、再現性の確認等も含め、引き続き共鳴オージェ電子分光測定を進める。実験で得られる共鳴オージェスペクトルの解析を進め、分子-基板間の電荷移動時間の評価を行う。また電荷移動ダイナミクスについての考察のため、対象分子についての量子化学計算の実施を予定している。得られた成果について原著論文として投稿する準備を進める。
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