研究課題/領域番号 |
22K14596
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
根岸 真通 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (70911147)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
|
キーワード | 薄膜合成 / 酸化物 / イルメナイト型構造 / スピネル型構造 / パルスレーザー堆積法 / 人工超格子 / 薄膜 / 磁性 / 反強磁性 / イルメナイト |
研究開始時の研究の概要 |
イルメナイト型といわれる結晶構造を持つチタン酸化物群を、原子レベルで膜厚を制御しながら堆積することによって、自然界には存在しない人工的な結晶構造(人工超格子)を構築する。作製した人工超格子の磁性を、複数の実験手法を用いて多角的に評価することによって、イルメナイト型人工超格子中で現れる磁気秩序や磁気相互作用について調査する。イルメナイト型人工超格子の磁性を解明することで、新奇量子磁性体をイルメナイト型人工超格子中で探究・制御する研究分野を開拓する。
|
研究実績の概要 |
イルメナイト型反強磁性体ATiO3 (A = Mn, Fe, Co, Ni)は、同型の結晶構造を持ちながら多様な反強磁性秩序を形成するため、本課題の対象物質に適している。本課題では、始めに、ATiO3の単結晶薄膜試料を実現するために、パルスレーザー堆積法による薄膜堆積実験を実施した。まず、MnTiO3について、基板の温度や蒸着源に照射するレーザー強度などの堆積条件を最適化し、イルメナイト型構造の単結晶薄膜が成長する条件を確立した。次に、MnTiO3で求めた堆積条件のもとで、ATiO3 (A = Fe, Co, Ni)の堆積実験を実施したところ、全ての物質でイルメナイト型構造が成長することが分かった。以上の実験結果により、多様な反強磁性秩序を有するイルメナイト型ATiO3 (A = Mn, Fe, Co, Ni)薄膜の合成方法が確立され、これらの物質を用いて人工超格子やヘテロ構造を作製する準備が整った。 また、イルメナイト型構造をもつ新奇量子磁性体候補物質であるMgIrO3の実現を目標に、Mg-Ir-O薄膜の堆積実験を実施した。堆積条件を変調して堆積したMg-Ir-O薄膜を比較したところ、多くの堆積条件で、MgOおよびIr(またはIrO2)からなる混合多結晶薄膜が形成されることが分かった。当初の目標であったイルメナイト型MgIrO3が主相として成長する堆積条件を見つけることはできなかったものの、特定の堆積条件で、先行研究で報告されていない新規Mg-Ir-O結晶相が成長することを発見した。電子顕微鏡での観察や結晶学的考察によって、新規Mg-Ir-O結晶相を、陽イオン秩序が乱れた逆スピネル型Mg2IrO4と推定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初から対象物質として想定していたイルメナイト型ATiO3 (A = Mn, Fe, Co, Ni)の薄膜堆積条件を確立したことに加えて、Mg-Ir-O薄膜についても堆積実験を実施し、新規Mg-Ir-O結晶相を発見したことから、当初の計画以上に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
作製した薄膜試料群において、磁性の評価を実施する。具体的には、磁化測定や、試料表面に堆積したPt膜の磁気抵抗効果を介して磁性を検出する方法を検討している。 また、磁気構造の異なる物質からなる人工超格子やヘテロ構造を作製し、磁性体層間の相互作用によって各層の磁性がどう変化するかを調査することによって、イルメナイト型構造における磁性の解明を試みる。
|