研究課題/領域番号 |
22K14715
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 康臣 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90784075)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | CO2還元光触媒反応 / 複合型光触媒 / 電気化学的重合反応 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、「半導体光触媒」と「金属錯体光触媒」を複合化した「ハイブリッド型光触媒」の光触媒特性を飛躍的に向上させる新規複合化手法の開発を目的とする。2種類の電気化学的な重合反応を駆使することで、半導体表面上の還元サイトと酸化サイトに、それぞれ還元触媒と酸化触媒を位置選択的に配置して、電子やホールの整流化を促し、水の酸化とCO2還元の両方を同時に高効率化することを目指す。また、金属錯体をポリマー化させることで、多層吸着による吸着量の増大と、多点相互作用による吸着耐久性の向上も同時に狙い、従来の吸着基を用いた錯体担持法が抱えていた問題点を一挙に解決することを試みる。
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研究実績の概要 |
本研究では、金属錯体-半導体複合型光触媒における光触媒特性の向上を目指し、金属錯体の担持量及び吸着強度を大幅に増大させる新規金属錯体担持手法の開発を行う。2022年度では、還元雰囲気下で進行する電気化学的な重合反応(ビニル重合反応)を用いた金属錯体担持手法の開発を試みた。まず初めに、配位子上にホスホン酸基とビニル基を有する金属錯体(Ruトリスビピリジン型光増感錯体、重合反応の起点として使用)を半導体粉末(主にカーボンナイトライド)上に担持させた。得られた複合体と複数のビニル基を有するRu錯体を含む懸濁液に対し、還元剤存在下、可視光を照射したところ、重合反応の進行に伴って半導体表面に金属錯体が担持されたことを確認した。この時の錯体の担持量は、ホスホン酸基のみを用いた従来の担持法使用時と比べて10倍程度まで向上した。また、触媒反応溶液(ジメチルアセトアミド-トリエタノールアミン混合溶液)に懸濁させ、金属錯体の脱離割合を見積もったところ、従来の担持法を用いた場合の半分以下にまで低減し、吸着強度の向上を確認することができた。更にRu錯体上に架橋配位子部位(他の金属イオンが配位できるビピリジン部位)を導入したところ、重合反応後の前駆体錯体との錯形成反応を用いて触媒錯体部位を導入することができ、半導体光触媒上に多核錯体光触媒を高い担持量及び吸着強度で担持することに成功した。 得られた複合型光触媒をジメチルアセトアミド-トリエタノールアミン混合溶液に懸濁させ、可視光を照射することでCO2還元光触媒反応を行ったところ、還元生成物としてCOとギ酸が検出され、その生成量は、従来系の約5倍となった。触媒活性の向上は、主に金属錯体の吸着量及び吸着耐久性の向上によるものと考えられ、本研究で開発した新規金属錯体担持法が複合型光触媒の調製法として適していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度から所属が変わり、申請時から研究環境が大きく変化した。新たに分析装置を導入する必要性もあり、研究環境を整えるために時間を要してしまった。2022年度中に、本研究を推進するための環境が整えられたため、2023年度は、成果の発表も含めて精力的に本研究の遂行に取り組みたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、まず上述のビニル重合反応を用いた担持手法の最適化を行う。2022年度の予備検討から、重合反応による金属錯体の担持量は光照射時間や錯体濃度によって大きく変化することが明らかになった。また、ビニル基のみを有するRu錯体とビニル基と架橋配位子の両方を有するRu錯体の比率を変えることで、半導体表面と触媒間の距離や重合度も変化すると考えられる。担持条件と光触媒特性の相関を明らかにし、最適な担持条件を模索する。さらに結晶面ごとに集まりやすいキャリアが異なる単結晶性の半導体光触媒に対して重合反応による金属錯体の担持を行い、金属錯体が半導体上のどこに担持されているかを表面分析を用いて調査する。また、先に検討した条件を用いてCO2還元触媒を導入した複合体に対して酸化助触媒(主に水の酸化反応を促進する金属酸化物等)を共担持することで、水を電子源とした二酸化炭素還元反応への展開も試みる。 また、電気化学的酸化反応によって進行する「ピロール重合」を用いた金属錯体の担持手法の開発も試みる。触媒(CO2還元触媒・水の酸化触媒等)の配位子上にピロール基を導入し、犠牲酸化剤存在下、光を照射することで、半導体上のホールによる重合反応を用いた金属錯体の担持を行う。この際、重合反応の反応条件と、金属錯体の担持量、吸着強度、光触媒特性の間にどのような相関があるかを系統的に調査する。さらに「ビニル重合」と「ピロール重合」を併用した場合には、二種類の金属錯体をそれぞれ還元雰囲気下、酸化雰囲気下という別々の条件下で担持させることができると期待される。半導体上の電子の集まりやすい「還元サイト」付近でビニル基を持つ還元触媒錯体の重合を、ホールが集まりやすい「酸化サイト」付近でピロール基を持つ酸化触媒錯体の重合を選択的に引き起こすことで、それぞれのサイト上に適切な触媒が担持された複合型光触媒の創製を狙う。
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