研究課題/領域番号 |
22K14789
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
天野 亮 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (20818687)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | RNAアプタマー / マルチプレックスSELEX / インスリン受容体 / トランスフェリン受容体 / 脳内薬剤送達用キャリア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、種差の壁が難題とされる脳内薬剤送達の標的分子「トランスフェリン受容体」および「インスリン受容体」をモデル標的として、そのマウス・ヒト受容体単体に加えて、内在性リガンドであるトランスフェリンやインスリンとの複合体など複数の選抜材料(抗原)を用いる「マルチプレックスSELEX法」によって、結合部位を三者間の共通領域(=マウスとヒト間共通かつリガンド結合部位以外の領域)に限定化したアプタマー選抜法を確立・最適化し、任意の領域に結合するアプタマー分子の創製を試みる。
|
研究実績の概要 |
創薬シーズの探索力の強化・高度化は、あらゆる疾患や生命現象の制御(創薬)と理解の深化(学術)に必須である。本課題では、RNAアプタマー特有の柔軟な創製法「SELEX法」を基盤とし、これまで困難であった「結合部位の限定化」と創薬(前臨床)に必須である「マウス/ヒト交差性(種差の壁)を克服する技術を、複数の標的分子を組み合わせた「マルチプレックスSELEX法」の構築によって実現することを目指す。本年度はまず、組換えマウス・ヒトトランスフェリン受容体(TfR)とインスリン受容体(IR)単体および内在性リガンドとの複合体を3種類の選抜材料を組合せて用いることで、結合部位を「マウス/ヒト共通部位かつ非リガンド結合部位」に限定化したSELEX実験および表面プラズモン共鳴(SPR)法による候補配列の機能評価を行った。約9回程度の選抜と増幅操作を繰り返した後、濃縮ライブラリーをハイスループットシーケンサーで解析、得られた膨大な配列情報から、アプタマー配列解析用プログラムFASTAptamer(doi: 10.1038/mtna.2015.4.)を用いて、候補配列を抽出した。次に、SPR解析によって、候補配列の結合標的の同定、結合親和性(解離定数 Kd)の算出およびマウス/ヒト交差性、内在性リガンドとの競合阻害性の評価を実施した。その結果、内在性リガンドとの非競合性を示す抗TfRアプタマー(Kd : 48 pM)とマウス/ヒト交差性を示す抗IRアプタマー(Kd : 0.044 pM)を単一のSELEX実験にて一挙に取得できた。このように本年度では、目標達成のためのマルチプレックスSELEX法およびSPR法による機能評価系の構築を完了し、さらに、当該技術の活用によって、マウス/ヒト交差性と内在性リガンドとの非競合性を示すアプタマー分子それぞれの取得に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた複数の標的分子を組み合わせた「マルチプレックスSELEX法」及びSPR法を用いた機能評価系の構築を果たし、TfRと内在性リガンドの結合を競合阻害しないアプタマー分子、マウスおよびヒトIR両方に結合するアプタマー分子を、単一のSELEX実験にて同時取得することに成功している。以上の理由から、おおむね順調に進んでいると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に構築した種々の技術の最適化を実施し、マウス/ヒト交差性を示し、内在性リガンドと受容体の結合を競合阻害しない分子の探索を継続する。また、本課題でモデル標的としたTfRおよびIRは、脳内薬剤送達において肝要な標的分子であるため、神経疾患の治療薬開発への貢献を目指し、本年度取得したアプタマー分子の機能向上を図る。具体的にまず、標的分子との結合に関与しない領域を取り除き、可能な限りの小型化を施す。次に、小型化アプタマーの配列に対してランダム変異を導入したライブラリーを作製し、再度SELEX実験を実施する。この操作によって配列最適化を施すことでより一層特異的かつ強固に結合するアプタマーの創製を試みる。
|