研究課題/領域番号 |
22K15108
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
篠田 沙緒里 京都産業大学, 生命科学部, 研究員 (60873205)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ミトコンドリア / ミトコンドリア輸送 / 機能性RNA / 近位依存性標識法 / RNA-seq / 酵母 / 蛍光in situ ハイブリダイゼーション |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリアは, ミトコンドリアの外からタンパク質や脂質を取り込むことで拡大し,その機能を維持している. 一方, 核ゲノムにコードされたRNAもミトコンドリアに輸送されることが複数の生物種で報告されている. しかし, タンパク質や脂質の取り込みと異なり, RNAに関しては,輸送されるRNAの種類や輸送経路, 輸送の生理的意義など多くが不明である. 本研究は, ミトコンドリアRNAの新規ラベル化手法の確立から, ミトコンドリア内に存在する核コードRNAの同定を通して, ミトコンドリアへのRNA輸送の分子機構とその生理的意義の解明を目的とする.
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研究実績の概要 |
本研究はまずミトコンドリアRNAの新規ラベル化手法の確立から, ミトコンドリア内に存在する核コードRNAの同定を目指した. ミトコンドリア内のRNAのみを標識するために, ミトコンドリア局在型APEX2を発現させた酵母から単離したミトコンドリアを用いてRNAをビオチンラベルすることに成功した. 次に, ビオチン化RNAをアフィニティビーズで精製し, RNA-seq解析に供した. その結果, ほとんどのミトコンドリアDNA (mtDNA) にコードされたRNAが,有意にビオチン化濃縮されたRNAとして再現性良く同定された. 一方で, サイトゾルに多量に存在するRNAは効率よく濃縮されなかったことから, この方法がミトコンドリア内のRNAの検出法として有効であることが示された. さらにmtDNA由来のRNAと同程度に高効率で濃縮された核ゲノム由来のRNAが複数種同定され, これらのRNAがミトコンドリア内に存在する可能性が示された. しかし, 一部のサイトゾル成分に含まれるRNAは一定数ビオチン化ラベルしてしまうことが明らかとなったことから, 得られた候補遺伝子の再検証を行う必要があった. そこで, これらの候補遺伝子がミトコンドリア内に存在するかどうかを蛍光in situ ハイブリダイゼーション (FISH) を用いたRNAの細胞内局在を確認した。通常のFISHでは発現量の低い候補遺伝子の解析が困難だったため, single molecule FISHを導入した. その結果RNAseqで得られた候補遺伝子の一部はミトコンドリアへ局在することを明らかにした. 以上の結果から, 新規ラベル化手法を確立し, ミトコンドリアへ輸送されるRNAの遺伝子候補群の絞り込みに成功し, RNAの細胞内局在から確かにこれらのRNAがミトコンドリアに存在することを証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
酵母を用いたRNAの効率的なビオチンラベル化法はこれまでほとんどがなく, 培養条件から基質の選定まで全ての条件検討を細かく行った. その結果, 非常に再現性が高くミトコンドリア内のRNAをラベル化する条件の最適化に成功した. さらにミトコンドリア内に存在する核コードRNAを探索するために, RNA-seqによる網羅的解析も独立して複数回数実行した上で再現性良く濃縮のかかる遺伝子を探索し, 複数種同定した. さらに, これらの候補遺伝子が真にミトコンドリアに存在することを確認するために酵母での一分子蛍光in situハイブリダイゼーション法(smFISH)を確立した。酵母を用いたsmFISH法はほとんど行われておらず, 本研究により手法を確立したことは今後の研究を推進する上でも重要である. smFISHの結果, 複数の候補遺伝子はミトコンドリア内に局在することを証明した. 以上の結果から, 新規ラベル化手法を確立し, ミトコンドリアへ輸送されるRNAの遺伝子候補群の絞り込みに成功し, RNAの細胞内局在から確かにこれらのRNAがミトコンドリアに存在することを証明したため, 当初の計画以上に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は今回同定したミトコンドリアへ輸送される新規遺伝子のミトコンドリアでの生理的意義の解明を目指す. 遺伝学的実験が容易な酵母を用いて, 同定した遺伝子の欠損株を作製し, ミトコンドリア機能への影響を観察する. 細胞外フラックスアナライザーによるミトコンドリアの呼吸活性はヒト培養細胞などでよく評価されているが, 酵母では細胞壁があるためほとんど使用されていない. 従って, 酵母細胞でも評価可能な条件検討を行った後, ミトコンドリアへ輸送されるRNA欠損細胞の呼吸活性評価を行う. また, ミトコンドリアの機能以外に, 膜電位維持やmtDNAの維持, mtRNAの安定性への寄与も検討する. 表現系が得られた場合は, RNAがミトコンドリア内で機能する分子機構の解析を行う. また, これまでにRNA-seqでは効率よく濃縮のかかったRNAをすでに350個同定している. 今後の検証でさらにミトコンドリアへ輸送されるRNAの種類が増えると考えられるが, FISHによるスクリーニングはコストの問題から困難である. そこで, 安易で高感度にRNAを検出する手法の開発を目指す. さらに, 異なる培養条件で培養した酵母のミトコンドリアで輸送されるRNAの種類が変化する可能性を検証するために, すでに確立したビオチンラベル化法を用いて様々な培養条件のミトコンドリアのRNA-seqを行い, 変動するRNAの同定を目指す.
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