研究課題/領域番号 |
22K15109
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
田中 真仁 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 特別研究員(PD) (20898192)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | マウス初期胚 / 核膜 / 力学計測 / ライブイメージング / 物性 |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類の初期胚は、細胞分化に関わる胚性ゲノムの活性化などが起こる重要な時期であり、それらの機能不全は胚発生に影響を及ぼす。本研究では、代表者が見出した初期胚の発生に伴う核膜の変形に着目して、それが持つ胚発生機能との関係を明らかにする。そこで、1)独自に開発した物性計測法を使って核膜の物性変化の定量的に解析する。2)また薬剤阻害実験で核膜の変形を生み出す分子を同定する。3)さらに新規の核膜変形操作法を用いて核膜の変形に伴う遺伝子発現パターン変動の解析することで、核膜の変形が引き金となる新たな胚発生の制御メカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
哺乳類の初期胚発生に伴う核膜の変形が持つ発生生物学的機能を明らかにするために、1)マウス初期胚の2細胞期特異的な核膜の構造や物性変化の詳細な解析を行った。2)昨年度に発見した核膜の変形や硬さを制御する分子がいかにして2細胞期で機能しているのか、その詳細な分子メカニズムについて調べた。さらに3)核膜の変形や物性の変化と胚発生の関連性についても調べた。具体的な研究成果を以下に記述する。 1)昨年度に確立した核膜の硬さ計測法や高解像ライブイメージングを用いて、薬剤処理や核膜の物性制御に関与する分子の過剰発現での2細胞期胚の核膜の硬さとその形の変化を定量解析した。その結果、2細胞期の核膜の硬さと変形の制御にどのような分子や力が働いているのかについての新たな洞察を得た。さらに初期胚核膜周辺の微細構造を観察するための超解像イメージング法の開発に取り組んだ。 2)高解像ライブイメージングを用いて昨年度に発見した核膜の軟化を制御する分子が2細胞期で減少する分子経路を同定し、また、その分子が2細胞期の核膜の軟化に関わっていることを支持するさらなる結果も得た。さらに核膜の軟化の上流制御因子が2細胞期で核内に局在することも分かった。 3)薬剤処理や核膜の物性制御に関与する分子の過剰発現によって核膜の変形や軟化を抑制した2細胞期胚は、その後の胚発生に影響を及ぼすことがわかった。また昨年度に確立したガラスキャピラリー法を応用することで非侵襲的に初期胚の核膜の硬さを計測することが可能になった。その結果、2細胞期に柔らかい核膜を持つ胚は高い発生能を持つことを発見した。さらにマウス初期胚核膜の硬さや変形を操作できる新規の顕微力学操作のためのプローブ作成とそのプローブの性能評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2細胞期で起こる核膜の軟化や変形にどのような分子や力によって制御されているのかについて調べること、核膜の軟化の上流制御因子の動態について詳細に解析することができ、また核膜の硬さと胚発生の関連性を示すことができたため。さらに当初の予定を超えて核膜の超解像イメージング法や顕微力学操作法の開発を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は新規の核膜の超解像イメージング法や顕微力学操作法を確立する。確立したイメージング法を使って2細胞期の核膜の硬さや変形を抑制した時の核膜直下のクロマチンや核膜の構造の変化を未処理の胚の核膜と定量的に比較する。また当初の予定通り、顕微力学操作法によって人為的に核膜のかたちや硬さを変えたときに、胚発生や遺伝子発現に影響を及ぼすのかを評価する。以上の実験を行い、2細胞期の核膜のかたちや硬さの変化が初期胚発生にいかに寄与しているのか、その詳細な分子機序を明らかにする。
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