研究課題/領域番号 |
22K15218
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
生駒 葉子 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20838510)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | グリア細胞 / 迷走神経刺激 / てんかん / 脳内環境 / 心身機能連関 / ファイバーフォトメトリー / 末梢中枢機能連関 |
研究開始時の研究の概要 |
体調や気分次第で思考そのものが変わるのは、末梢/グリアからの影響によるものと考えられる。本研究では、末梢神経である迷走神経を求心性に刺激し、中枢脳へ刺激を送り込む方法を活用して、てんかん病態治療の新戦略を開拓する。迷走神経刺激(VNS)から中枢脳機能変化へと至る道筋はグリア細胞が担う。外部からの刺激に鋭敏に反応し、また脳内環境を強力に支配しているのは、グリア細胞だからである。本研究では、VNSと中枢神経刺激を組み合わせ、グリア細胞活動を的確に誘導し、病態制御の最適化を目指す。本研究の目的は、心身機能連関のメカニズムを明らかにすることで、心の成り立ちを全身性に理解することである。
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研究実績の概要 |
脳内環境は、中枢神経細胞だけではなく、末梢神経やグリア細胞から様々な制御を受ける(総説; Ikoma and Matsui, Autonomic Nerv Sys 2022)。体調や気分次第で心の動きが変化するのは、末梢やグリア細胞からの影響があると考えられる。本研究では、末梢神経である迷走神経を求心性に刺激し、中枢脳へ刺激を送り込む方法を活用して、てんかん病態治療の新戦略を開拓。迷走神経刺激(VNS)から中枢脳機能変化へと至る道筋はグリア細胞が担うと考えられる。外部からの刺激に鋭敏に反応し、また脳内環境を強力に支配しているのは、グリア細胞だからである。本研究では、グリア細胞活動を的確に誘導し、病態制御の最適化を目指す。本研究の目的は、心身機能連関のメカニズムを明らかにすることで、心の成り立ちを全身性に理解することである。 これまで、まずは、過剰興奮が引き起こされる「てんかん」をモデルとして、てんかん時の脳内環境や抗てんかん状態時の脳内環境が変化する仕組みを解明することに取り組んできた。てんかん発展にともなう脳内環境の変化を、光ファイバーフォトメトリーシステムを用いて検証した結果、脳内代謝調節を制御している視床下部のアストロサイトカルシウム増加、局所血流量増加、アストロサイトpHが酸性化することが示された(Ikoma et al., Brain 2023a)。なお、このような脳内環境変化は、てんかんのような極端な病態時だけでなく、REM睡眠時のような生理的な状態変化時にも観察されることが示された(Ikoma et al., Brain 2023b)。また、迷走神経活動を電気生理学的に記録する方法、迷走神経をオプトジェネティクスで刺激する方法、カフ電極を用いて刺激する方法なども開発。今後、迷走神経刺激による中枢グリア細胞の反応を解析し、病態制御のメカニズムを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、マウスを用いて、海馬電気刺激を繰り返す(キンドリングする)ことでてんかん様症状を誘導し、てんかん発展に伴う脳内環境の変化を明らかにした。実験には、アストロサイト特異的にカルシウムセンサーやpHセンサーを発現している遺伝子改変マウスを使用し、脳内代謝制御に主要な役割を果たす視床下部に光ファイバーを留置した。海馬電気刺激によっててんかんを誘導し、てんかん発展時の視床下部での脳内環境変化をファイバーフォトメトリー法で検討した。今回用いたFRET型Ca2+センサーでは、本来、細胞内Ca2+が上昇するとCFP蛍光が減少し、YFP蛍光が上昇し、鏡像応答波形が得られることが期待される。しかし、生体脳では血流の変化や細胞内pHの変化に、それぞれの蛍光が影響されることが明らかになった。そこで、アストロサイトのカルシウム、pH、局所血流量の変化の全ての要素を分離して算出するマルチプレキシング法を新たに開発した。この新方式を用い、てんかん発展に伴う脳内環境変化を検討したところ、視床下部アストロサイトのカルシウム増加、pHの酸性化、局所血流量の増加がみられた。以上の結果から、てんかんの増悪化には、グリア細胞から神経細胞への作用があることが示唆された(Ikoma et al., Brain 2023a)。なお、これまで、脳梗塞などの病態時でもない限り、脳細胞内のpHは比較的安定に保たれ、酸性化やアルカリ化等のpH変動はあまり起きないと考えられてきた。ところが、本研究を通して、生理学的状況下においても、REM睡眠中にアストロサイトが酸性化することが明らかになった。さらに、てんかん誘導前に比べ、てんかん病態時には、REM睡眠中のグリア細胞の酸性化が強化されることが示され、研究成果をBrain誌で論文発表した(Ikoma et al., Brain 2023b)。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、てんかんと抗てんかん作用をオプトジェネティクスで検討する研究を行ってきた(Shimoda, Ikoma et al., Neurbio Dis 2022)。脳細胞内カルシウム、pH、局所脳血流量等の脳内環境の変化を、ファイバーフォトメトリー法で光計測する方法を開発してきた(Moriya, Ikoma et al., Neural Reg Res 2022; Ikoma et al., Brain 2023a, b)。本研究の主な研究対象である迷走神経については、マウスの左頸部迷走神経にカフ電極を留置して神経を刺激する方法、ならびに、同電極を用いて迷走神経活動を記録する方法を開拓することに取り組んできた。さらに、迷走神経を特異的にオプトジェネティクス光刺激する共同研究も実施(未発表;論文受理済み)。遠心性の迷走神経刺激の効果は検証するには、心拍変動を検出するのが効果的だが、これまでの研究を通して、心拍や体温等の身体反応を記録する技術も修得してきた(Miyata, Ikoma et al., IBRO Neuro Rep 2022)。 以上の研究技術を統合し、引き続き、本研究では、末梢から中枢への刺激を送り込むことで脳内環境変化を誘導し、抗てんかん時の脳内環境とグリア細胞機能変化を光計測することに取り組む。また、脳内代謝制御を行う視床下部に加え、迷走神経の入力先である孤束核においても脳内環境変化を同時計測することに取り組む。中枢‐末梢同時刺激などによって、効果的に脳内環境変化を誘導し、てんかん治療の最適化を図る。本研究により、病態制御のメカニズムが明らかになるだけでなく、末梢神経やグリア細胞を介した心身機能連関の基本メカニズムが解明されることが期待される。
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