研究課題/領域番号 |
22K15263
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
伊藤 貴章 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (20878160)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 吸入治療 / バイオ医薬 / ドラックデリバリー / エレクトロスピニング法 / 電界紡糸法 / 肺送達性 / 吸入粉末剤 / 空気力学的粒子径 / エレクトロスピニング (電界紡糸) / 製剤学 / ナノファイバー |
研究開始時の研究の概要 |
吸入粉末剤 (DPI)は吸入剤開発の第一選択であるものの、①調製の際、高温処理するため熱に弱い薬物に適用できない、②粒子の付着凝集性が高く、肺送達性が使用者の吸入能力に依存する問題がある。 申請者は、薬物を室温で繊維固化できるエレクトロスピニング (ES)法に着目した。繊維構造を維持しつつ中空多孔低密度に微粒子化することで、付着凝集を防ぎつつ肺送達性に優れるDPIが調製できる。 本研究では、ES法DPIの製剤設計基盤を構築する。肺送達性および薬物安定性を評価軸に、ES法DPI調製の最適条件を明らかにする。そして、様々な薬物を用いてES法DPI調製技術の汎用性を証明し、実用化への道筋をつける。
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研究実績の概要 |
本研究は、「エレクトロスピニング (ES)法を新規吸入粉末剤調製法として応用するための製剤設計基盤構築」を目的としている。本年度は優れた薬物安定性と肺送達性を達成するES法吸入粉末剤 (DPI)の最適条件を見出すことを試みた。モデル薬物にタンパク質であるα-キモトリプシン (α-Chy)または低分子蛍光試薬であるフルオレセインナトリウム、賦形剤に医薬品添加剤を中心とした生分解性ポリマーを採用した。そして、(1)試料や溶液濃度など製剤組成、(2)印加電圧などファイバー調製条件、(3)微粒子化方法を変化させ、物性の異なるES法DPIを調製した。 薬物安定性評価として、α-Chyの基質であるp-ニトロフェニル酢酸を添加し、吸光光度計を用いて加水分解物を定量することでα-Chy含有ES法DPI の活性を評価した。その結果、粉砕時間がDPIの薬物安定性に大きな影響を及ぼすことがわかった。長時間の粉砕はα-Chy酵素活性が低下した。また、α-ChyのES法DPIは、水溶液と比べて有意に優れた保存安定性を示した。肺送達性評価として、カスケードインパクターを用い、 ES法DPIの肺到達率を測定した。その結果、粉砕時間がDPIの肺到達率に大きな影響を及ぼすことがわかった。ナノファイバーマットを3分間粉砕したDPIは、肺送達率は20%を超えた。粉砕時間が3分より短い場合、粉砕が不十分で、吸入特性が低下した。長時間の粉砕は、幾何学粒子径を低下させた一方で繊維構造が破壊され、肺到達率が低下した。走査型電子顕微鏡観察の結果、粉砕時間が3分のES法DPIは繊維構造を維持した中空多孔低密度の粒子が観察された。ES法DPIが優れた肺送達性を達成するためには、中空多孔低の繊維構造が重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度予定していた、「ES法DPIの製剤設計」および「ES法DPIの調製条件の最適化」は実行できた。加えて、当初令和5年度からの実施を予定ししていた「ES法ファイバーおよびDPIの物理化学的性質評価」にも一部着手できている。学会や論文による成果発表も行った。以上の理由から進捗状況を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
推進方策について大きな変更は無い。本年度に優れた肺送達性と薬物安定性を満たすES法DPIを調製できる目処がついたため、当初の計画通りに、「ES法DPI調製の製剤設計基盤構築」および「ES法DPI調製技術の幅広い汎用性とin vivo有効性の証明」を推進する。進行状況によっては、mRNAを用いたES法mRNA DPI製剤の開発を検討する。 また、本年度の検討において、ES法ファイバー中に糖類を含有することで短時間のDPI製造が可能であることを見出した。本結果は、ES法DPIのさらなる肺送達性と薬物安定性の向上が可能であることを示唆するものである。その点を考慮して、「ES法DPIの調製条件の最適化」を次年度も引き続き実施していく。当初の予定より、効果が期待できる組成を多く選択し、製剤組成の最適化を試みる。
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