研究課題/領域番号 |
22K15394
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浜口 知成 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (90812149)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | パーキンソン病 / 腸内細菌 / 便秘 / 短鎖脂肪酸 / GLP-1 / GPCR |
研究開始時の研究の概要 |
パーキンソン病は、中脳黒質ドパミン神経細胞への Lewy小体(α-synuclein異常蓄積)出現 を特徴とする加齢とともに増加する神経変性疾患であり、2030年には世界で1000万人の罹患数に到達すると推定される。近年、パーキンソン病の少なくとも半数は腸管発症であることが高いレベルのエビデンスで明らかにされつつある。しかし、今日まで特定の腸内細菌による病態への影響を調べるモデルマウス研究は殆ど存在しない。本件研究はパーキンソン病における腸内細菌叢の役割を明らかにして、パ ーキンソン病の発症および進行要因に迫る。
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研究実績の概要 |
申請者は特定の腸内細菌がパーキンソン病を発症させると仮説を立てている。本課題の目的の1つは発症および進行に関わる腸内細菌を特定することである。2つ目はパーキンソン病における短鎖脂肪酸の役割を明らかにすることである。1つ目の目的に対してパーキンソン病に多い菌株を無菌化およびSPFの野生型マウスに腸内細菌移植実験(ノトバイオート実験)を行った。パーキンソン病最初期症状に便秘が認められるため、排泄能解析および病理学的解析を行った。①代謝ケージを用いてマウス排泄能を評価した。24時間蓄便、摂餌量等を記録した。移植モデルでは便の総数と総重量、水分含量がいずれも有意に減少していた。摂餌量や飲水量、蓄尿量、便の総乾燥重量に差は見られなかった②新鮮便を採取して病理標本を作成した。蛍光レクチンと細菌特異的な蛍光色素標識プローブ(EUB338)で共染色した。レクチンの平均輝度が移植モデルマウスでは優位に減弱していた。これは便中ムチンの低下を示唆する。以上の結果から、パーキンソン病に多い菌株は便秘を誘発することが示唆された。2つ目の目的に対してGPR41KOとαSynuclein overexpression (ASO) の交雑マウスを使って行動試験を行った。Beam testとPole test、Rotarod test 、Wire hanging testで解析したところ、交雑群がいずれも機能低下を示した。脳のELISAを行ったところ、GPR41 KOマウスにおいては短鎖脂肪酸投与による GLP-1分泌が認められなかった。黒質のミクログリアの形態変化がGPR41KOマウスにおいて認められた。そしてGLP-1agonist投与群は形態変化を認めなかった。これらの結果からGPR41KOによって短鎖脂肪酸によるGLP-1分泌刺激が損なわれ、行動障害を引き起こす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パーキンソン病の腸内細菌叢メタ解析から得た知見をもとに作成したノトバイオートマウスが便秘症状を呈した。つまり、腸内細菌叢研究から便秘の原因菌を同定した。申請者の知る限り、便秘症状を示すノトバイオートモデルマウスはこれまで存在しない。これまでの便秘研究では、モルヒネなどの薬物投与モデルと繊維欠乏食誘発モデルが使用されていた。今回、新しいモデルマウスを提唱できる可能性がある。 また今回、GPR41KOとASOマウスの交雑マウスの解析から、短鎖脂肪酸がGPR41を介して中枢性GLP-1を分泌刺激する可能性を示した。ミクログリアを対象にした形態解析は当初の計画になかったが、GPR41KOによって変化を示した。一方、GCG-Creノックインマウスを利用した神経回路研究は遅れている。本研究で導入したGCG-Creノ ックインマウスが中枢でのCreリコンビナーゼを発現しておらず、想定外であった。そのため、別系統のGCG-Creノックインマウスを入手予定である。
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今後の研究の推進方策 |
腸内細菌叢による便秘症モデルマウスにおいては、便秘症状を誘発する菌特有の機能に焦点をあてた研究をこれから展開する。ムチン分解能をもつ酵素の遺伝子をノックアウトした菌株を作成する。この遺伝子破壊株を移植したノトバイオートマウスにおいて、便秘症状を評価する。パーキンソン病患者の腸管粘膜のムチン層の菲薄化の可能性が指摘されているため、ノトバイオートモデルマウスの腸管標本を作成して、腸内環境の変化(ムチン粘膜層の厚さ、便中ムチンの量、菌の群集形成度合い等)を評価する。また、ムチン菲薄化に伴う腸管透過性の進行もパーキンソン病患者に認められているために、蛍光標識でキストランを使った腸管透過性試験を行う。一方で、便秘症状のために当該腸内細菌が増加した可能性を探るために、止瀉薬投与モデルマウスの便中菌叢解析を行う。 GCG-Creを利用した神経回路の解析が遅れている。別系統のGCG-Creノックインマウスの繁殖に急いで取り掛かる。
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