研究課題
若手研究
代表的な難治癌の一つである肝内胆管癌では、近年その有効性が多くの癌腫で示されている免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブなど)の効果が十分に得られない症例が多いことが知られている。しかし一方で、印刷事業所従事者で報告された職業性胆管癌では、免疫チェックポイント阻害薬が高い治療効果を示す可能性が示唆されており、良好な成績が得られた症例も報告されている。同じ肝内胆管癌でも、発癌に至る背景因子によって癌細胞の特性や腫瘍周囲微小環境が大きく異なる可能性がある。本研究は肝内胆管癌を背景因子などにより細かく分類し、それぞれにおける分子生物学的差異を明らかにすることでその治療戦略樹立を目指すものである。
肝内胆管癌(ICC)における各亜分類(small / large duct型)別の臨床病理学的検討を行い、両者の特徴を比較した。その結果、large duct型ではリンパ節転移や肝門部脈管浸潤例が有意に多いことが明らかとなり、各亜分類において至適な外科治療戦略が異なる可能性が示唆された。また、腫瘍微小環境解析ではsmall duct型の一部で樹状細胞による抗原提示から癌免疫編集が高度に生じている症例が認められることが明らかとなった。これにより、至適な薬物治療戦略についても亜分類で異なる特徴を示す可能性が示唆される。
WHO分類に示された肝内胆管癌の亜分類について、両者の詳細な臨床病理学的な差異はこれまで明らかではなかった。本研究により、肝内胆管癌の亜分類が外科手術および薬物療法を含む治療戦略樹立に影響を及ぼすことが示唆された。代表的な難治癌の1つである肝内胆管癌において、至適な治療戦略樹立を目指したバイオマーカー探索は重要な役割を果たす。本研究で亜分類が治療に及ぼす影響が示唆されたことで、これを踏まえて今後治療戦略を再考していく必要がある。これは肝内胆管癌治療成績向上に大きく寄与していく可能性を有する。
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