研究課題/領域番号 |
22K16755
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
水上 優哉 近畿大学, 医学部, 助教 (20881163)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 骨代謝 / 基質小胞 / 細胞外小胞 / 骨再生 / 石灰化 |
研究開始時の研究の概要 |
健康寿命の延伸に向けて、骨再生治療の新たな戦略が求められている。骨芽細胞が骨基質中に分泌する細胞外小胞の一つである基質小胞(MtVs)に着目し、MtVsの投与がが骨修復遅延、骨粗しょう症、異所性石灰化に与える影響を評価・解析することにより、MtVsによる細胞間コミュニケーションを介した新たな骨代謝制御機構を提唱するとともに、本機構を標的とした革新的な骨再生治療戦略の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
骨芽細胞が産生する基質小胞は、石灰化過程で重要な役割を担う細胞外小胞の一つである。近年、骨組織においてエクソソームをはじめとする細胞外小胞を介した細胞間情報伝達による骨代謝制御機構が報告されている。基質小胞も細胞間情報伝達を介した石灰化とは異なる生理作用の存在が示唆されるが、不明な点が多い。そこで本研究では、骨芽細胞が分泌する基質小胞の骨・軟骨再生過程、骨代謝調節、異所性石灰化における作用を明らかにすることを目指す。 2022年度は、骨芽細胞由来の基質小胞をマウス大腿骨欠損部に局所投与することで、基質小胞の骨修復・再生に対する影響を検討した。 石灰化誘導したマウス新生児頭蓋骨由来骨芽細胞培養プレートから、コラゲナーゼ処理により細胞外基質中の基質小胞を分散させたのち、段階遠心法により基質小胞を回収した。カチオン性ゼラチンハイドロゲルに基質小胞を浸潤し、マウス大腿骨欠損部に移植した結果、対照群と比較して新生骨の形成が有意に促進された。骨修復部の組織学的評価では、基質小胞の投与により軟骨形成とALP陽性骨芽細胞数が増加したことから、軟骨・骨芽細胞性の骨形成を促進することが示唆された。また、基質小胞の局所投与では骨欠損部周囲の骨膜領域にOsterix、PDGFRα、SDF-1陽性細胞の著明な集積が観察された。一方、培養細胞を用いた検討では、基質小胞は骨芽細胞分化を抑制し、骨芽細胞のALP活性および石灰化に影響を及ぼさなかった。 以上の実験結果から、マウス骨修復部において、骨芽細胞由来基質小胞が骨・軟骨形成が活性化し、骨修復を促進することをはじめて明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、基質小胞の単離法・特性解析手法を確立するとともにin vitro、in vivoでの実験系の確立に成功した。確立した実験系を用いることで、マウスにおいて基質小胞が骨修復を促進することをはじめて明らかとし、学会発表、論文発表を行った。また、確立した実験系は今後研究予定の骨代謝調節および異所性石灰化への影響評価および基質小胞を介した骨修復メカニズムの解析を目的とした研究においても応用可能である。 以上の理由より、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、骨粗鬆症および異所性石灰化に対する骨芽細胞由来基質小胞の影響を評価する。 骨粗鬆症モデルマウスとして、両側卵巣摘出マウスを作製し、マウス頭蓋骨由来骨芽細胞様株MC3T3-E1由来基質小胞を週に2回静脈内投与する。マイクロ-CT装置を用いて骨形態計測を行う。強い効果がみられた場合、カルセイン標識後の骨硬組織切片の骨形態計測により、骨形成・骨吸収・石灰化等の評価を行う。さらに前述の方法により、大腿骨組織におけるタンパク質、mRNAの発現を解析する。また、ELISA法により各マウスの血中骨形成マーカー(Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド、骨型ALP)、血中骨吸収マーカー(Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチド)を測定する。 異所性石灰化モデルマウスとして、Trauma/burn処置によるアキレス腱異所性石灰化誘導マウスを作製し、マウス頭蓋骨由来骨芽細胞様株MC3T3-E1由来基質小胞を週に2回静脈内投与する。基質小胞の継続的な投与と並行して手術3週後より9週後まで、異所性石灰化をマイクロCT 装置によって解析する。石灰化したアキレス腱組織を摘出し、石灰化量、や石灰化関連因子(ALP, ANK, ENPP1, Pitsなど)発現、骨芽細胞数、骨芽細胞分化関連因子の発現、骨形成に関わるシグナル伝達系の発現及び活性化レベルを上記と同様に検討する。 上記のin vivo実験から得られた知見をもとに、基質小胞が作用する骨組織中の細胞を同定するとともに、in vitro実験により、基質小胞の作用を詳細に解析する。また、RNAシークエンスにより基質小胞中に含まれるmiRNAを解析し、作用があった細胞に対して影響を与えた責任因子の同定を行う。
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