研究課題/領域番号 |
22K17000
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 知真也 北海道大学, 歯学研究院, 招へい教員 (50928299)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | ビスホスホネート / 骨特異的血管 / 骨芽細胞 / 微細構造 / エクソソーム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネートが骨特異的血管と血管平滑筋などに対する細胞学的作用、また、骨特異的血管と骨芽細胞系細胞の相互作用における影響についてモデルマウスを用いた解析を行う。なお、骨芽細胞は破骨細胞からのカップリングの影響を受けるため、破骨細胞が存在しないマウスにビスホスホネートを投与することで、カップリングの影響を排除した状態でのビスホスホネートの骨芽細胞や血管に対する直接作用を解析する。
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研究実績の概要 |
ビスホスホネートは、破骨細胞に取り込まれ細胞内で細胞骨格の阻害やアポトーシスを誘導することが知られている。一方、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞などの周囲細胞は物質の取り込みを活発に行う細胞であることから、血中のビスホスホネートを取り込む可能性が高く、破骨細胞と同様にビスホスホネートによる影響を受ける可能性が推測される。そこで、本研究では、ビスホスホネートが骨特異的血管と血管平滑筋などの周囲細胞に及ぼす影響を検索した。解析には、ビスホスホネート製剤であるアレンドロネート(ALN)、または、溶媒(生理食塩水)を連続皮下投与(1mg/kg/day, 10日間)した野生型マウスの大腿骨を用い、各種組織学的解析に供した。その結果、ALNを投与したマウスでは、骨組織特異的なendomucin陽性血管の管腔径が小さくなり、血管壁が一部不連続を示していた。また、ALN投与により、血管内皮細胞の管腔面に多数の突起構造やexosome様の小胞が観察され、ALNが骨特異的血管の微細構造変化を誘導する可能性が推測された。また、骨芽細胞の活性化は、破骨細胞とのカップリングに依存するが、一方で、endomucin陽性骨特異的血管が骨芽細胞の活性化に関与する可能性も報告されている。そこで、ALN投与後における骨芽細胞、破骨細胞の挙動を組織学的に解析したところ、コントロールマウスおよびALN投与マウスの両方で、TRAP陽性破骨細胞が認められ、本投与量・期間のアレンドロネート処方では破骨細胞がさほど抑制を受けておらず、破骨細胞と骨芽細胞のカップリングと、それに続く骨芽細胞活性化は維持されていると推測された。ところが、ALN投与マウスでは、コントロールマウスに比較して、ALP陽性骨芽細胞の領域が減少していた。このことから、骨特異的血管と骨芽細胞の相互作用が生じている可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、令和4~5年度の2年間で、1) ビスホスホネートの骨特異的血管と血管平滑筋などの周囲細胞に対する微細構造学的解析、また、2) 骨特異的血管と骨芽細胞系細胞の相互作用に対するビスホスホネートの細胞学的メカニズム、を検索することを計画している。令和4年度は、野生型マウスへのALN投与により、骨特異的血管の管腔径狭小や血管壁の形態異常を明らかにするとともに、破骨細胞抑制がみられる前段階から骨芽細胞活性が低下することを見出した。これらの結果は、研究代表者が研究計画立案時に推測した可能性と大きく矛盾するものではない。また、現在、ALNを投与した血管周囲細胞および骨芽細胞系細胞の細胞骨格や接着因子、細胞増殖についての解析を進めており、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、ALNを投与した骨特異的血管、血管周囲細胞および骨芽細胞系細胞の細胞骨格や細胞接着因子、cell-to-cell contact等について、超解像顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いた微細構造解析と遺伝子発現解析を組み合わせることで多面的に解析を進めてゆく。なお、ALN投与による骨芽細胞系細胞への影響については、ALNによる破骨細胞抑制がカップリングを阻害することで、骨芽細胞も抑制されることを考慮に入れる必要がある(本実験の投与量・期間のアレンドロネート処方では、破骨細胞がさほど抑制を受けていないものの、破骨細胞由来の影響を排除しきれない)。そこで、破骨細胞が存在しないマウス(Rankl遺伝子欠損マウスやc-fos遺伝子欠損マウス等)にALNを投与し、血管や周囲細胞、骨芽細胞系細胞に生じる変化を明らかにしてゆく。なお、ALN投与野生型マウスの血管内皮細胞で多数exosome様の小胞が観察されたことから、循環系を介した全身の臓器連関も視野に入れて検索を進めてゆきたい。
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