研究課題/領域番号 |
22K17020
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
山崎 亮太 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (70841998)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | Persister / 歯周病原性細菌 / 殺菌 / 過酸化水素 / A. actinomycetemcomitans / バイオフィルム / 薬剤治療 |
研究開始時の研究の概要 |
歯周病はおもに口腔病原細菌により惹起され、成人の多くが罹患している疾患である。本申請研究では、歯周病が持続する原因の1つは細菌が形成するPersisterであるとの仮説のもと、歯科治療で用いられている薬剤に対する歯周病原性細菌のPersisterの存在とそのリスクを明らかにし、治療・予防戦略の確立につながる研究を展開していく。
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研究実績の概要 |
歯周病はおもに口腔病原細菌により惹起され、成人の多くが罹患している疾患である。また、歯周病は治療が奏効せず、高い再発率や根治が難しい点が問題となっている。その原因として、口腔内細菌の多種多様な因子が研究されてきたが、本研究では、その一因として、生体の免疫応答や抗生物質に対して、抵抗性を示す細菌の“Persister化”に着目している。抗生物質などの薬剤治療後にPersisterを形成した歯周病菌が生存してしまい、それが再増殖することで歯周病が再発・持続化していると考える。ゆえに、歯周病原性細菌のPersister形成を明らかにし、それを排除する方法を見い出すことで新たな治療・予防戦略の確立につながる研究を展開していく。 歯周病原性細菌の中でも限局性侵襲性歯周炎の起炎菌とされているAggregatibacter actinomycetemcomitansをターゲットとし、従来使用されている歯科治療薬のうち、過酸化水素によるPersisterの形成率を求めた。4xMICの過酸化水素処理で、およそ1%の細菌が24時間後も生存し続けていることが明らかとなった。生存菌が遺伝子突然変異による薬剤耐性菌ではないことも確認され、従来報告されているような細菌Persisterのふるまいを見せることを明らかにし、歯周病原性細菌Persisterの存在を示す結果となった。また、RNAシーケンスにより遺伝子発現量を調べることで、過酸化水素処理によるPersister化のメカニズムにオートインデューサーであるAI-2を取り込むためのトランスポーター、Lsrファミリーが重要であることを突きとめた。現在はそれをもとに詳細なメカニズム解明を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周病原性細菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansが過酸化水素処理によりPersisterを形成することを明らかにし、歯周病が細菌Persisterの存在により持続化・慢性化しているのではないか?ということを示すことができる段階に来ている。この研究を学術論文として公表することで、歯周病治療に新たな概念を示すことができ、新規の治療法の展開や確立を位置付けていけることを確信している。ゆえに研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると考え、今後は論文化すること、さらには多種の細菌でのPersister化を調べていくことが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにAggregatibacter actinomycetemcomitansに対する過酸化水素処理で、Persisterが生存することを明らかにした。今後はPersisterを形成する詳細なメカニズム解明を行うことで、Persisterの排除法や形成抑制法などを模索する。また、ヒトの口腔内は数百種類もの細菌が細菌叢を形成しており、歯周病もまた単一の細菌による疾患ではなく複合的に炎症を起こしていることがわかっている。そのため、レッドコンプレックスと言われるPorphyromonas gingivalisやTannellera forsythia、Toreponema denticolaなどに対する歯科治療薬を作用させた際のPersister化の影響も調べる必要がある。直近ではこれまでの結果をまとめ、学術論文として投稿することを優先し、その後は上述したように視野を広げた内容で研究を推進していく。
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