研究課題/領域番号 |
22K18695
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
廣部 大地 静岡大学, 理学部, 助教 (70823235)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | Chirality / Spin polarization / 電流誘起スピン偏極 |
研究開始時の研究の概要 |
磁気抵抗デバイスを用いて、超伝導体による電荷-スピン相互変換現象を実験的に開拓します。超伝導研究へ接合界面でのスピントロニクス効果を導入することで、理論的予言を検証します。本研究の完遂は、たとえば磁化反転による情報書き込みの消費電力の飛躍的な低減に道をつけるものであり、超低消費電力を標榜するスピントロニクスの希求するに資すると期待できます。
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研究実績の概要 |
空間反転対称性の破れた伝導体では電子の角運動量と運動量とが結合し、電流誘起角運動量偏極が現れる。典型例がEdelstein効果であり、空間反転対称性の破れた超伝導体でも生じることが理論的に予言されている。研究代表者はそのような超伝導体を用いた輸送実験により、超伝導Edelstein効果に由来するスピン信号の検出に挑むとともに、逆効果の観測にも挑戦することを研究構想で提案した。その検出原理は空間反転対称性の破れから予想される一方向性の界面スピン流に基づくものである。本研究の完遂は、超伝導体を用いた電気-スピン変換に立脚する超伝導スピントロニクスの発展に寄与するものである。また、本実験の検出原理は超伝導Edelstein効果に限定されるものではなく、スピン三重項Cooper対を選択的に検出する方法論の可能性も示しており、関連する実験及び理論研究にも波及効果を有する。 当該年度は磁気抵抗超伝導デバイスを用いて、超伝導体/強磁性体の接合界面におけるスピン依存磁気抵抗の観測を目指し、これを支持する結果を論文として出版することができた。ただし、実験結果と理論予想の比較検討から、非従来型の非線形スピン伝導が関与する可能性を見出した。当初想定していた電流誘起角運動量偏極とは異なる機構であり、全く別の物質群で提案された作業仮説を支持するものであった。当初の研究構想とは異なるものの、これ自身興味深い課題設定であり、今後の発展性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の当初計画は、強磁性電極を含む磁気抵抗デバイスを用いて、超伝導体/強磁性体の接合界面におけるスピン依存磁気抵抗の観測を目指すものであった。この予想と整合する電圧信号を観測することに成功し、その電流強度依存性・磁場角度依存性・エナンチオマー依存性を多角的に検討し、キラリティ誘起スピン蓄積を支持する結果を得た。以上のことから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究成果から、当初想定していた線形領域の現象よりも非線形領域の現象が検出信号を決定している可能性が出てきた。当初計画では線形領域を作業仮説としていたため、次年度の研究実施計画を修正することが望ましい。また、研究代表者の異動に伴って低温実験環境が変わったため、その再整備から始めることを勘案のうえ研究実施計画を修正する。具体的には、より温和な測定条件で動作可能な、常伝導体における非線形スピン依存伝導をまずは研究対象とし、上述の仮説検証をすすめる。低温実験環境の立ち上げと調整後、超伝導体へ順次移行することを目指す。
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