研究課題/領域番号 |
22K18898
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 圭晃 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (40785010)
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研究分担者 |
石原 真吾 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40760301)
安達 正芳 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (90598913)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | ガス浮遊法 / 高温熱物性 / 溶融金属 / 表面張力 / 浮遊測定法 / ガス浮遊 / 計算計測融合 |
研究開始時の研究の概要 |
溶融体(1000℃以上の溶融した金属等)の熱物性(粘性等)は,鋳造・3Dプリンタ等の高温プロセスの支配因子であり,高精度な測定技術が求められる.しかし,溶融体は高温かつ高反応性で容器に格納した測定が難しい.そこでガスジェットにより溶融体を浮遊させ振動特性から熱物性を算出する手法が提案されている.しかし,その計測安定化や溶融体変形に伴う精度低下の検証は限定的である.本研究では,実験計測が困難な溶融体内外の流体数値モデルを構築し,実験計測で取得可能な溶融体の振動特性と同化を行う.これにより,浮遊が安定化する条件を予測し,溶融体の変形が物性推算精度に及ぼす影響も定量的に評価可能となることを目指す.
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研究実績の概要 |
溶融金属をコニカルノズル内でガスジェットにより浮遊させる際の安定性を調べるため,溶融金属を剛体球と仮定した数値解析を行った.これまで硫化銅の溶融温度である1300K程度に限定して浮遊安定性を解析していたが,新たに複数の温度域(700K-1600K)で浮遊解析を実施した.その結果,鉛直方向の釣り合い位置(平衡点)は温度上昇と共に上方へと移ること,水平方向には全ての温度域で安定性を持つものの,上方で保持される場合には試料直径の10%程度の振幅で横揺れを生じることを見出した.これにより,硫化銅だけでなく異なる溶融温度を持つ金属や酸化物を対象とした浮遊安定性・平衡点を予測することが出来るようになった. また,ガスジェットからの流体力を考慮し溶融体の浮遊変形解析を行うことで,ガス浮遊法で用いられる表面張力モデルの精度を評価可能とした.具体的には,表面振動を計測し球面調和関数により表面張力係数を近似的に求めるモデルである.従来モデルは溶融体にはたらく外力(重力や流体力)が無いと仮定したものであり,外力が存在すると予測精度が低下することが分かった.これに対し,溶融体にはたらく流体力を考慮した修正モデルを提案し,表面張力係数の予測精度が大幅に向上することが示された.また,提案した修正モデルの適用範囲はボンド数によって整理出来ることも明らかとなり,密度の異なる物質に対しても適用性があることが示された.ここまでの成果は国際学会3件,国内学会1件の発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の進捗により,実験とのデータ融合解析を行う上での同化対象に表面張力係数を取り入れること,また異なる温度域での溶融体浮遊状態を模擬出来ることが示され,必要とされる数値計算モデルを殆ど確立することが出来た.また,実験による表面形状・浮遊位置の画像データ取得も進んでおり,データ同化に向けた準備が順調に進んでいると評価出来る.表面張力係数の修正モデルは当初の計画には無かった内容だが,溶融体の変形解析を詳細に行うことで得られた予定外の成果であり,実験で取得する物性値の精度を向上させるという最終的な目的を達成する上で重要なステップと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた成果を元に,溶融体の浮遊に関するデータ同化解析ツールの構築を進める.同化対象を表面張力係数と溶融体の浮遊位置とし,始めに今年度取得した実験データとの融合解析を試みる.また,今年度構築した表面張力係数の修正モデルも適用することで,溶融体の表面張力係数の実験計測精度向上を狙う.
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