研究課題/領域番号 |
22K18903
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白土 優 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70379121)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 磁性材料 / 薄膜 / スピントロニクス / 結晶成長 |
研究開始時の研究の概要 |
磁性材料(磁石)は代表的な機能性材料であり、モーターや発電機等の電力機器から、ハードディスクドライブ等の情報処理デバイスまで広く利用されている。現在の磁性材料は、鉄やコバルトを母体として必要な磁気特性を実現している。これは、単体で磁石となる元素が限られる(鉄、コバルト、ニッケルのみ)ことによる。つまり、これらの元素を用いずに磁石を生成することが出来れば、従来の磁石材料の開発指針を覆すとともに、材料選択の幅と機能性を飛躍的に増大させることができる。本研究では、単独では磁石にならないクロムと主成分とした薄膜化し、薄膜の成長過程で生じる表面サイト選択を利用することで、新規な磁性材料を開発する。
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研究実績の概要 |
自然界に存在する多くの材料は酸化物であり、磁性(磁気的性質)の観点では、磁石にならない反強磁性と呼ばれる性質を示す。事実、単元素・室温で磁石になる元素はFe,Co,Niに限られており、現在実用化されている磁石はすべて、FeやCoを主成分としている。すなわち、もし酸化物の反強磁性を制御し、強磁性化(磁石化)することができれば、磁性材料の元素戦略・材料選択性を飛躍的に向上させることが可能になり、磁性材料設計の大きな転換点となる可能性を秘める。材料の磁性は、磁気モーメントと呼ばれる原子レベルの磁石(N‐S極)がどのように配列するかに依存し、反強磁性では隣り合う磁気モーメントが互いに向きを打ち消しあうように配列している。本研究では、材料形成の際の作製プロセスにおいて、この磁石の相反的な配列の一部を、磁気モーメントを持たない元素で置換する手法で、反強磁性材料の強磁性化(正確には、フェリ磁性化)する手法を開発する。具体的には、反強磁性材料であるCr2O3に対して、薄膜の成長過程で非磁性元素(Alなど)を添加することによる磁性の改質、ならびに、その発現メカニズムを実験的に解明することを目的とする。これらの成果をもとに、通常は磁石にならない材料を磁石化することのできる新規材料作製手法の構築を目指している。2022年度は、Cr2O3薄膜にAlを添加することで反強磁性からフェリ磁性へ改質できること、ならびに、発現するフェリ磁性のAl添加量による変化、結晶成長との関連を明らかにした。これらの成果の一部は、国内外の講演大会、学術論文で発表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未添加では反強磁性を示すCr2O3薄膜に対して、Alを添加することにより自発磁化が発現する(フェリ磁性化する)ことを明らかにした。また、発現する自活磁化はAl添加量とともに増加するが、Cr2O3の結晶構造の崩壊とともに消失することを見出し、自発磁化の生成起源が結晶構造と密接に関連していることを明らかにした。また、成長方向(結晶方位)を変化させることで、同じAl添加量であっても自発磁化の発現が抑制される場合があることも見出している。さらに、デバイスなどへの応用に向けて、発現する自発磁化を電気的に検出する手法も開発した。申請時の研究目標を順調に達成しており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果としては、当初の目標を順調に達成しており、問題なく進展している。一方、磁性の起源解明にはごく低温から室温にわたる広い範囲での磁気測定が必須であるが、昨今の液体ヘリウム価格の高騰・供給不安定により、当初予定していた低温測定をすべて消化するには至っておらず、このため、繰越金が発生している。これらについては、供給不安のない液体窒素温度での計測で一部代替するとともに、液体ヘリウムを極力使用しない計測技術(成果にも記載した電気計測はこれにも該当する)を開発しており、2023年度はこれらも含めて、効率的に研究を進める。
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